たった2回の注射で
神経細胞を回復させて
アルツハイマー病マウスの
認知機能を改善することに成功
記憶力や認知機能の低下を引き起こす
アルツハイマー病に関する既存の治療法では、
病気の進行を遅らせることはできるものの、
認知機能の低下を逆転させることは困難です。
新たに学術誌のCell Biomaterialsに
掲載された論文では、
ナノ粒子を含む注射を2回打つだけで、
アルツハイマー病のマウスの認知機能を
改善することに成功したと報告されました。
成人の脳には一度失われたニューロンを
修復・再生する能力が限られているため、
アルツハイマー病の症状を
逆転させるのは困難です。
そこで、
サウスカロライナ大学の薬学教授である
ペイシェン・シュウ氏らの研究チームは、
ナノ粒子を用いて特定のタンパク質を分解する
「Nano-ERASER」という方法に着目しました。
Nano-ERASERの基となったテクノロジーは、
2017年にケンブリッジ大学などの
研究チームが発表した「Trim-Away」です。
Trim-Awayは特殊な抗体を用いて、
哺乳類の細胞内にある特定のタンパク質を
分解するという仕組みでした。
そして2023年、シュウ氏らを含む
サウスカロライナ大学の研究チームは、
ナノ粒子を豊富に含んだ注射可能な
ポリマーゲルを用いて抗体を投与する
Trim-Awayの改良版を開発しました。
この改良版がNano-ERASERであり、
2023年の研究では乳がん細胞を
標的に実験が行われました。
今回シュウ氏らの研究チームは、
Nano-ERASERがアルツハイマー病の
治療に役立つのかどうかを調べるため、
脳内でニューロンを支える役割を持っており、
必要に応じて新たなニューロンへと分化する
アストロサイトに目を向けました。

アストロサイトがニューロンへ分化する
プロセスは主に発達期に起こり、
成熟した脳では劇的に減少することがわかっており、
この変化は「PTBP1」というタンパク質によって
調整されていると考えられています。