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2026/1/2

何兆キロメートル離れていても… 2つの電子の相関関係が生み出す 「量子もつれ」。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

何兆キロメートル離れていても…

2つの電子の相関関係が生み出す

「量子もつれ」。

 
 

その本質を言い当てた

「朝永振一郎の、

たった一言」が、

じつに深すぎる、

という驚愕の事実

 
 
 

山田 克哉


 

圧倒的に面白い、

「量子論の名著歴代ベスト10」

(英紙ガーディアン)選出の傑作ロングセラー!

 

 

1925年、ハイゼンベルクの

行列力学によって誕生した量子力学。

 

 

この新しい物理学を疑うアインシュタインが、

1935年のEPR論文で打ち出したのが

 

「量子もつれ」です。

 

 

たとえ100兆km離れていても

瞬時に情報が伝わる

“不気味な遠隔作用”が、

 

ボーア、シュレーディンガー、

パウリ、ボームらを巻き込んで、

長く、激しい論争を巻き起こしました。

 

 

量子論の運命を決定づけた

ベルの不等式とはなにか?

 

 

隠れた変数、局所性と非局所性、

量子の実在をめぐる議論とは……?

 

 

 

 

【書影】宇宙は「もつれ」でできている〈新装改訂版〉
 

 

 

 

「素粒子」と「量子」の違い

 
 

アインシュタインらが、

量子力学が不完全な理論であると

主張するために考え出した“思考実験”としての

「量子もつれ」とは、

どのようなものだったのか?

 

 

「量子もつれ」について理解する前提として、

ここまで特段の断りなく使用してきた

「素粒子」や「量子」という言葉について、

あらためて説明しておこう。

 

 

 

素粒子とは、

物質を構成したり力を媒介したりする、

内部構造をもたない点状粒子のことをいう。

 

 

陽子や中性子を構成するクォーク、

電子などがその代表例であり、

 

これら素粒子には、

質量やスピン、

電荷といった、

それぞれに固有の物理量が備わっている。

 

 

量子とは、物質やエネルギーなど、

さまざまな物理現象における

物理量の最小単位であり、

 

「波動性」と「粒子性」とを併せ持つ

物理的存在である。

 

 

原子や電子、

光子などがその代表例であり、

量子力学はこれら量子に適用される物理学である。

 

 

量子力学誕生以前の物理学を、

新たに登場した量子力学と

対比する意味で「古典物理学」とよぶ。

 

 

「スピン」とはなにか

 

前回の記事で、

ディラック方程式からはスピンの

概念が自然に得られると述べた。

 

 

スピンとは、

電子などの素粒子がもつ

「量子力学的な角運動量

(スピン角運動量)」のことである。

 

 

スピンのおおざっぱな喩(たと)えとして

「自転」と表現されることもあるが、

自転が通常、

(たとえばフィギュアスケーターの回転のように)

 

その物体自身が回転する現象を指すのに対し、

量子力学における素粒子のスピンは、

 

 

その粒子に備わった内的な性質を示すものであり、

素粒子自身がくるくると回転している

わけではないことに留意していただきたい。

 

 

 

量子力学における素粒子のスピンは、素粒子自身がくるくると回転しているわけではないことに留意したい photo by gettyimagesイメージギャラリーで見る
この記事の全ての写真を見る(全4枚)

 

 

素粒子には「質量やスピン、

電荷といった、

それぞれに固有の物理量が

備わっている」と記したが、

 

筆者はこれらを、

素粒子に「生まれつき備わった物理量」と

表現している。

 

“生まれつき”備わっているのだから

取り出しようがなく、

 

したがって、

たとえば電子1個のもつ電荷は

増やすことも減らすこともできない。

 

 

つねに一定で同一の値を示すからこそ、

さらにはその値が電荷の最小値であるからこそ、

電子1個の電荷の絶対値

(それは陽子の電荷に等しい)は

「素電荷(電気素量)」とよばれ、

 

あらゆる電荷の基本単位となっている。

 

どんな電荷も、

素電荷の整数倍の値しかとることができない。

 

 

以下では、

素粒子/量子の代表として、

電子を例に考えていく。

 

 

電子のスピン方向は

2つしかない

 
 

電子には、

質量に加えて「電荷」と

「スピン」が生まれつき備わっている。

 

 

電荷とスピンは、

電子に「永久磁石」としての性質をもたらす。

 

磁石としての電子は、

外部に存在する磁場と相互作用を起こす。

 

 

電子のように物質を構成している

素粒子はフェルミ粒子とよばれるが、

 

フェルミ粒子はすべて1/2のスピンをもっている。

 

スピン1/2とは、

2回転して初めて元の状態に戻るような

角運動量を指し、

 

1回転では「半分」まで戻るという意味で

「スピン1/2」と表現する。

 

 

電子に生まれつき備わっているスピンは、

「方向」をもつベクトル量である。

 

電子のスピンの状態

(正確には、スピン角運動量の磁気モーメント)は、

 

1922年に行われた

「シュテルン=ゲルラッハの実験」の結果から、

 

2つしかないことが判明した

(シュテルン=ゲルラッハの実験については、

 

『宇宙は「もつれ」でできている〈新装改訂版〉』の

第4章で紹介されている)。

 

その詳細は省略するが、

ここで強調したいことは、

電子のスピンの方向は、

たった2つしかないということである。

 

 

なぜ2つしか存在しないのか? 

――わからない。

 

 

電子のスピンは徹底的に

「量子力学的なスピン」であり、

 

電子とはそういうスピンを生まれつき備えた

素粒子なのである、

と言うほかないのだ。

 

 

2つの量子に生じる

「相関」関係

 
 

電子のスピンがもつ2つの方向を

「上向き」と「下向き」とし、

 

前者を「スピン・アップ」、

後者を「スピン・ダウン」とよぶことにしよう

(何に対して上向き/下向きかということはここでは問わない)。

 

 

ここでカギを握るのが、

2つの量子のあいだに生じる「相関」関係だ。

 

2つの量子が相互作用を起こすと、

それら2つの量子のあいだには相関関係が生じる。

 

いったん相関関係をもった2つの量子が

互いにどんなに遠く離れても、

その相関性は完全に

保たれるという性質がある。

 

 

たとえば、

相関関係をもった2つの量子が電子である場合、

2つの電子のあいだには、

 

一方のスピンが上向き

(スピン・アップ)であった場合に、

他方のスピンは必ず下向き

(スピン・ダウン)になるという

 

相関関係がつねに保たれる。

 

これは2つの電子がひと組となって、

全体の角運動量がゼロになるような

相関性をもつからである

(スピン・アップをプラス、

スピン・ダウンをマイナスと考えて、

合計のスピンはプラスマイナスゼロ)。

 

 

このような2つの電子の相関性を

「合成スピンゼロ」とよぶことにする。

 

 

いま、ある1つの電子発射装置から、

相関関係をもった2つの電子が互いに正反対の方向に、

まったく同じ速度で同時に発射されたとしよう。

 

同一の装置から同時に発射されたのだから、

2つの電子はまったく同じ速度で互いに

正反対の方向に飛んでいく。

 

これら2つの電子は、

合成スピンゼロの相関性をもっている。

 

 

「量子もつれ」を生み出すもの

 
 

相関関係をもった2つの電子を

発射した装置からまったく同じ距離の地点に、

2つの電子測定装置が置かれているとしよう。

 

この電子測定装置は、

発射された2つの電子が飛んでいく軌道上にあり、

それぞれ別の観測者

(観測者Aと観測者B)が待機している。

 

 

少し大げさな距離を考えて、

2つの電子測定装置の間隔は100兆kmであるとする。

 

それぞれの電子測定装置は2つの電子を

発射した装置から同じ距離だけ離れているので、

電子発射装置は2つの電子測定装置の

ちょうど中間点に設置されていることになる。

 

 

中間点にある発射装置から

発射された2つの電子は、

まったく同じ速度で飛んでいくので、

ちょうど50兆kmずつを進んで、

同時に2つの電子測定装置に到達する。

 

観測者Aと観測者Bはあまりにも遠く離れているので

(なにしろ100兆km!)、

互いの姿はもちろん、

相手の測定装置もまったく見ることができない。

 

 

しかし、

これら2つの電子のあいだには、

はっきりとした相関関係がある。

 

両者の合計スピンはつねにゼロであるという、

実に明瞭な「相関」関係である。

 

 

ただし、

どちらの電子が上向き(スピン・アップ)で、

どちらの電子が下向き(スピン・ダウン)であるのかは、

誰にもわからない。

 

 

わかっているのは、

相関関係にあるスピンの方向が互いに

反対向きであるということだけである

(合成スピンゼロ)。

 

 

この2つの電子の「相関」関係こそが、

「量子もつれ」を生むのである。

どういうことか。

 

 

スピンの向きは

事前には決まっていない

 
 

生まれつきスピン1/2をもつ2つの電子は、

中間点にある電子発射装置からそれぞれ

反対向きに同じ速度で同時に飛び出し、

 

同じ距離(50兆km)を飛んだ後に、

それぞれの軌道上にある電子測定装置に到達する。

 

すなわち、2つの電子は同時に、

それぞれの電子測定装置に入ることになる。

 

この間、2つの電子のスピンの方向は終始、

合成スピンゼロを保っている。

 

 

繰り返すが、

これが2つの電子のあいだにある

「相関」関係である。

 

 

したがって、

もし観測者Aがスピン・アップを観測したなら、

観測者Bはスピン・ダウンを観測するし、

反対に観測者Aがスピン・ダウンを観測したなら、

観測者Bはスピン・アップを観測することになる。

 

 

ここで重要なことは、

2つの電子のスピンの向きは、

事前に決まっているのではない、

ということだ。

 

実際に観測される前だから、

スピンの向きがどちらで

あるのかがわからないのではない。

 

どちらの電子のスピンも、

測定装置に到達して観測されるまで、

上向き(スピン・アップ)か下向き

(スピン・ダウン)かは決まっていないのである。

 

 

朝永振一郎が語ったこと

 

ここが量子力学の面白いところであり、

不可思議なところでもある。

 

 

どちらの電子にも

スピン・アップ/スピン・ダウンの

どちらでもありうる可能性があり、

 

実際にどちらであるのかは

観測するまではわからない。

 

量子力学的には、

観測前の個々の電子のスピンの方向は、

見えていないからわからないのではなく、

「本当にわからない」のである。

 

 

このような観測される前の

個々の電子のスピン状態について、

 

1965年にノーベル物理学賞を受賞した

朝永振一郎は

「スピンの方向は上向きでもなければ

下向きでもない」と表現している。

 

 

 

朝永振一郎は「スピンの方向は上向きでもなければ

下向きでもない」と表現した 

イメージギャラリーで見る

 

 

であるならば、

観測される前の電子はいったい

どういう状態にあるのか?

 

 

「上向きでもなければ下向きでもない」

スピンをもつという現実離れした電子の状態を、

いったいどうやって表したらよいのだろう?

 

 

      

「観測される前の電子の状態」とは、

いったいどのようなものなのでしょうか?

 

 

<参考:朝永振一郎>

 

1喧嘩はするな、
2意地悪はするな、
3過去をくよくよするな、
4先を見通して暮らせよ、
5困っている人を助けよ、

 

 

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