2025/12/7

人間の脳は感覚を 経験する前から 「世界をどのように 理解すればいいのか」 を知っている可能性

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

人間の脳は感覚を

経験する前から

「世界をどのように

理解すればいいのか」

を知っている可能性

 

 

 

 

 

 

 

研究者らは長らく、

脳の思考パターンは生まれつき構成されているのか、

それとも経験に応じて思考パターンが形成されるのか

という謎について考えてきました。

 

新たにカリフォルニア

大学サンタクルーズ校の研究チームが、

 

人間の脳には何かしらの

感覚を経験するよりも前から、

 

「世界をどのように理解すればいいのか」の

指示が与えられている可能性があるとの

研究結果を発表しました。

 

 


脳はコンピューターと同様に電気信号、

つまりニューロンの発火によって動作しています。

 

しかし、

発達初期の人間の脳は母親の

子宮によって保護されているため、

 

人間の脳においていつニューロンの

発火が始まるのかを研究するのは困難でした。

 



ところが近年では、

ヒト幹細胞から培養した脳組織の

3Dモデルである脳オルガノイドがさまざまな実験で

扱われるようになりました。

 

脳オルガノイドは倫理的に大量培養可能であり、

体内ではなく実験室環境で存在できることから、

発達初期の脳を観察する有用なツールとなっています。

 



今回研究チームは、ヒトやマウスの幹細胞から

脳オルガノイドを作り、

特殊なマイクロチップを用いて電気活動を測定しました。

 

論文の共著者であるカリフォルニア大学工学部の

タル・シャーフ氏は、

「感覚入力や臓器とのコミュニケーションから

本質的に切り離されたオルガノイドシステムは、

 

この自己組織化プロセスで何が起こっているのかを

垣間見ることができる窓を

提供してくれます」と述べています。

 

 

 

 

 

脳オルガノイドを観察したところ、

人間の脳が視覚や聴覚といった複雑な

外部感覚情報を受信・処理できるようになる前の

発達初期の段階で、

 

感覚を翻訳する基盤となる特徴的な

パターンを持つ電気信号を、

ニューロンが自発的に

発し始めていることが確認されました。

 



またシャーフ氏らが脳オルガノイドにおける

ニューロンのスパイクを観察した結果、

初期のパターンが脳の「デフォルトモード」と

顕著な類似性を持つこともわかりました。

 

脳のデフォルトモードは、

ニューロン発火の基本的な基盤構造であり、

嗅覚や味覚といった特定の信号を脳が処理すると、

ニューロン発火はより具体的なものに変化するとのこと。

 

 


これらの観察結果は、

発達初期の脳は感覚入力を

まったく受けていないにもかかわらず、

 

ニューロンが時間に基づく複雑なパターンで

発火していることを示唆しています。

 

つまり、

脳は何かしらの感覚を経験する前から、

「世界をどのように理解すればいいのか」の

指示が与えられている

可能性があるというわけです。

 



シャーフ氏は、

「これらの細胞は明らかに相互作用し、

外界から何かを経験する前に

自己組織化された回路を形成しています。

 

そこには原始的な状態で出現する

オペレーティングシステムが存在しているのです」

「私たちが脳の発達初期段階でこれらを

観察できるということは、

 

進化が中枢神経系に地図を構築し、

世界をナビゲートおよび相互作用できるように

する方法を解明したことを示唆しています」と述べました。

 

 

 

 

発達初期の脳に関する研究が進むことで、

人間の神経発達や病気についてより深く理解したり、

農薬やマイクロプラスチックが脳に及ぼす

影響を正確に特定したりできるようになります。

 

シャーフ氏は、

「これによって前臨床段階で臨床医と協力し、

より安価で効率的、

かつ高スループットな化合物や薬物療法、

遺伝子編集ツールを開発することが

可能になります」と述べました。