2026/5/7

あくびをすると脳に 「知られざる動き」が 起きていたと判明

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

あくびをすると脳に

「知られざる動き」が

起きていたと判明

 
 
 

 

私たちは眠くなったり、

退屈したときに、よく「あくび」をします。

 

 

しかし実は、科学者たちは今もなお、

私たちがなぜあくびをするのかを

はっきり説明できていません。

 

 

他の動物もあくびをすることが知られており、

ヒトの胎児も発達の早い段階であくびをします。

 

 

つまり、

あくびは単なる「退屈のサイン」ではなく、

進化の中で長く保存されてきた、

かなり根本的な生理現象である可能性があります。

 

 

今回、

豪ニューサウスウェールズ大学(UNSW)の

研究チームは、

リアルタイムMRIを使って、

あくびをするときの頭部と首の内部を観察。

 

 

その結果、あくびの最中には、

脳を守る液体である脳脊髄液が、

通常の深呼吸とは異なる動きを見せる

ことがわかったのです

 

あくびは「ただの深呼吸」

ではなかった

 
 

研究チームが注目したのは、

脊髄液(CSF)血液の流れです。

 

 

脳脊髄液とは、

脳や脊髄の周囲を満たしている透明な液体です。

 

 

水の中に浮かぶ物体のまわりを水が包むように、

脳と脊髄を取り囲み、衝撃から守っています。

 

 

さらにこの液体は、

栄養を運び、老廃物を外へ運び出す

役割にも関わっています。

 

 

つまり脳脊髄液は、

脳を守るクッションであると同時に、

脳の環境を整える循環システムの一部でもあるのです。

 

 

研究では、

健康な成人22人がMRI装置の中で、

通常呼吸、深呼吸、あくびをこらえる動作、

 

そして映像によって誘発された

「伝染性あくび」を行いました。

 

 

伝染性あくびとは、

誰かがあくびをしているのを見ると

自分もあくびをしたくなる現象です。

 

 

チームは、

人や動物があくびをする映像を見せることで、

参加者の自然なあくびを引き出しました。

 

 

比較のために、

参加者には「あくびのふりをした

深呼吸」も行ってもらいました。

 

 

もしあくびが単なる大きな深呼吸なら、

MRIで見える液体や血液の動きも

深呼吸と似ているはずです。

 

 

ところが、

実際には違っていました。

 

深呼吸では、

静脈血が頭蓋骨の外へ流れ、

脳脊髄液はそれとは逆に頭蓋骨の内側へ

向かう傾向が見られました。

 

 

これは通常の呼吸でも見られる

生理的な動きです。

 

一方、本当にあくびをしたときには、

静脈血と脳脊髄液が一緒に

頭蓋骨の外へ向かって流れていました。

 

 

つまり、

あくびでは「脳から出ていく流れ」が

一時的にそろうような、

独特の動きが起きていたのです。

 

 

チームにとっても、

これは予想外の結果でした。

 

あくびと深呼吸はどちらも大きく息を

吸う動作に見えますが、

脳脊髄液に関しては、

まったく同じものではありませんでした。

 

 

外から見ると似ている行動でも、

脳のまわりでは別の生理現象が

起きていた可能性があります。

 

 

また、あくびの初期段階では、

内頸動脈を通って脳へ入る

血流も増加していました。

 

 

脳から静脈血と脳脊髄液が外へ向かい、

それと同時に新しい動脈血が

入ってくるような変化が見られたのです。

 

 

この結果は、

あくびが単に眠気や退屈の副産物ではなく、

脳周辺の液体循環を一時的に

切り替える行動である可能性を示しています。

 

 

 

脳の「掃除」や「冷却」に

関わる可能性

 
 

では、なぜあくびのときに脊髄液や

血液の流れが変わるのでしょうか。

 

 

チームは、

現時点では断定できないと慎重に述べていますが、

いくつかの興味深い可能性を挙げています。

 

 

一つは、

あくびが脳内の老廃物の移動に

関わっている可能性です。

 

 

脳は活動する中で老廃物を生み出します。

 

こうした不要な物質の排出には、

脳脊髄液の流れが関係していると

考えられています。

 

 

アルツハイマー病やパーキンソン病、

認知症などの神経変性疾患では、

脳内や脳周囲に老廃物が蓄積することが

関係している可能性が指摘されています。

 

 

そのため、

あくびが脳脊髄液の流れを変えるという

今回の発見は、

 

加齢や神経変性疾患の研究に

新しい視点を与えるかもしれません。

 

 

ただし、ここで注意が必要です。

 

今回の研究は、

「あくびをすれば脳の老廃物が

除去される」と証明したわけではありません。

 

 

あくびの最中に脳脊髄液の流れが

変化することを示した研究であり、

その変化が実際にどの程度、

老廃物除去に役立つのかは今後の課題です。

 

 

もう一つの可能性は、

脳の温度調節です。

 

人間の脳は、

体のほかの部分よりも最大で

摂氏1度ほど高くなることがあり、

 

脳から出ていく静脈血は、

入ってくる動脈血よりわずかに

温かいとされています。

 

 

今回の研究では、

あくびの際に比較的冷たい動脈血が

頭蓋内へ流れ込む量が増える様子も

確認されました。

 

 

そのためチームは、

あくびが脳の熱を逃がし、

温度を安定させる仕組みに関わっている

可能性もあると考えています。

 

 

脳は温度変化に敏感な器官です。

 

熱くなりすぎれば、

細胞の損傷やけいれん、

脳の腫れなどのリスクが高まります。

 

 

だからこそ私たちの体には、

血流や発汗など、

温度を調節する仕組みがいくつも備わっています。

 

 

あくびもその一部なのかもしれません。

 

今回の研究は参加者22人という小規模なものであり、

調べられたのも映像で誘発された伝染性あくびです。

 

 

眠気や起床時、

就寝前に自然に出るあくびでも

同じことが起こるのかは、

まだ確認が必要です。

 

 

それでも、

あくびが深呼吸とは異なる形で

脳脊髄液と血流を動かすことを

リアルタイムMRIで示した点は、

非常に興味深い発見です。

 

 

私たちが何気なくしているあくびの裏では、

脳を守る液体と血液が、

 

ほんの一瞬だけ特別な流れを

作っているのかもしれません。

 

 
 

<参考: >