「つらく思える偶然の一致が続くとしたら、
それはなぜだろう?」
最近、そんなことを考えさせられる出来事が続きました。
思いがけない形で次々と起こり、
まるで避けてきた問題と
向き合わされているような感覚です。
そんなとき、
おーつーさんから勧められて読んだ本が、
多摩大学大学院名誉教授・田坂広志さんの著書
『すべては導かれているー逆境を越え、
人生を拓く、五つの覚悟』でした。
本の冒頭には、こう書かれています。
「いま、逆境の中にある、あなたへ」
その一文に、
ページをめくる手が止まりました。
まるで自分のために書かれた
本のような気がしたからです。

田坂さんは32歳で大病を患い、
生死の境をさまよいました。
生きる希望を失い、
不安と後悔に苛まされる日々だったといいます。
ある日、
藁にもすがる思いで訪れた禅寺で、
禅師からこう言われます。
過去は、無い
未来も、無い
有るのは
永遠に続く
いま、だけだ
いまを生きよ!
いまを生ききれ!
この言葉に心を打たれ、
田坂さんは「今日という日を
精一杯生きよう」と決意します。
過去を悔やまず、未来を恐れず、
「いま」を生ききること。
そもそも過去も未来も無く、
有るのは永遠に続く「いま」だけ。
いまを生き切るうちに不思議なことがおき、
いつしか病は消え、
「救われた」思いだったと振り返ります。
私も、一度「死ぬかもしれない」と
思った経験がありました。
出産から一か月、
原因不明の高熱が続き、大学病院に搬送されました。
治療しても熱が下がらず、
医師から「手術しか方法がないが、
大出血する可能性が高く、
目を覚まさないかもしれない」と告げられます。
40度の熱と割れんばかりの頭痛の中、
生まれたばかりの子どもを前に、
私はただ横たわっていました。
「この子は、
母親がいない子になるのかもしれない」
こんなときは遺書でも書くものかなと思ったけど、
高熱と息苦しさで気力もなく、
手つかずのまま手術の日を迎えます。
その後、私は生き延びました。
あれから10年以上経ち、
今では子どもの成長を見守りながら暮らしています。
一度は死にかけた私が、
あのとき叶わないかもしれないと思った
時間を過ごせただけで十分と感じ、
この命は「もらったもの」だと思うようになりました。
田坂さんは、
この本の中で
「逆境を乗り越えるための五つの覚悟」と、
それによって起こる三つの変化を紹介しています。
三つの変化とは、
「出来事の意味が変わる」
「勇気が湧く」
「直観や運気が動き出す」ということ。
この変化の根底にあるのが、
「すべては導かれている」という思想です。
良いことも悪いことも、起こるすべてに意味がある。
そう考えることで、
私たちは状況を肯定的に受け止めることができます。
結果、
まるで不思議としかいいようのない
変化が生まれていました。

田坂さんは、
禅寺からの帰り道にこう考えたそうです。
日々の仕事を通じて、世の中に光を届けるために、
この命を使っていこう。
命尽きる、その最後の一瞬まで、
この道を歩んでいこう。
私もまた書くことを通じて、
誰かの心に小さな光を届けられたらいいなと感じました。
今日を精一杯に生きること。
偶然と見える出来事の中に、
意味を感じ取りたい、
気付ける感性を育める
自分でありたいと願っています。
逆境にあるとき、
つい、「自分はついてない」と思いがちです。
ですが、
本当は何かに導かれているのかもしれません。
そう思うと少し心が軽くなりました。
世界の見え方まで変わってきます。
「つらく思える偶然」に意味を見出し、
「覚悟」を持って、いまを生きる。それが、
きっと新しい一歩を踏み出す力に
なるのだろうと信じています。