2024/9/27

日本人と欧米人は「腸の中」まで違っていた!ゲノム解析によって判明した「人種」と「腸内細菌」の関係

 
 
 
 
 
 
 
 

日本人と欧米人は

「腸の中」まで違っていた!

ゲノム解析によって判明した

「人種」と「腸内細菌」の関係

 

「お腹の調子が悪くて気分が落ち込む」

という経験がある人は多いのではないだろうか。

 

 

これは「脳腸相関」と呼ばれるメカニズムによるものだ。

 

腸と脳は情報のやりとりをしてお互いの

機能を調整するしくみがあり、

 

いま世界中の研究者が注目する

研究対象となっている。

 

 

腸内環境が乱れると不眠、うつ、発達障害、

認知症、糖尿病、肥満、高血圧、

免疫疾患や感染症の重症化……と、

 

 

全身のあらゆる不調に関わることが

わかってきているという。

 

いったいなぜか? 

 

脳腸相関の最新研究を解説した

『「腸と脳」の科学』から、

その一部を紹介していこう。

 

 

 

 

 
 
 
4つの細菌
 
 

私たちヒトを生物分類の階級に従って表記すると、

動物[]、脊椎動物[]、哺乳[]、サル[]、

ヒト[]、ヒト[]、サピエンス[]となります。

 

 

つまり、

界、門、綱、目、科、属、種の順の分類階級があります。

 

この分類階級は、

進化の過程をたどることのできる道しるべです。

 

 

同じ階級に属している生物同士は、

性質も似通っています。例えば、

ヒト科に属している生物にはチンパンジー属や

ゴリラ属があります(図2─1)。

 

 

 

 

 

 

メタゲノム解析によって、

ヒトの腸内マイクロバイオータもこのように

分類することが可能になったのです。

 

 

解析の結果、

ヒトの腸内マイクロバイオータの99%以上は、

 

細菌界における以下の4つの門が

優勢であることがわかりました。

 

 

1 ファーミキューテス門(Firmicutes:名称がBacillotaに改訂された)
2 バクテロイデス門(Bacteroidetes:名称がBacteroidotaに改訂された)
→ヒトの腸内に多く存在する腸内細菌の代表格で、腸管免疫に影響を与える
アクチノバクテリア門(Actinobacteria:名称がActinomycetotaに改訂された)
4 プロテオバクテリア門(Proteobacteria:名称がPseudomonadotaに改訂された)
※文献等では旧名称が用いられることが多いため、本記事も旧名称で統一します。

 

 

保有しているヒトは非常に少ないのですが、

その他、

 

フソバクテリア門(Fusobacteria)や

ウェルコミクロビウム門(Verrucomicrobia)、

ユーリアーキオータ門(Euryarchaeota)

などの細菌も含まれています。

 

 

なお、

日本人の腸内マイクロバイオータは、

紹介した4つの門の細菌が90%以上を占めていますが、

 

人種によって少し異なります。

 

欧米人では、

4つの門に加えて、

ウェルコミクロビウム門と

ユーリアーキオータ門が加わりますが、

日本人ではこの2門は極めて少ないです。

 

 

 

住む地域や人種で

大きく変化する

 
 
 

このように、

住む国や地域、さらには人種によって

腸内マイクロバイオータは、

大きく変化するのです。

 

 

なお、ヒトと他の動物、

例えばマウスやラットなどと

腸内マイクロバイオータを比較すると、

その組成は大きく異なります(図2─3)。

 

 

 

 

 

 

そのため、

マウスやラットを用いた実験結果を、

そのままヒトに当てはめて考えることには

注意が必要です。

 

 

また、

体内では胃から大腸に向かうにしたがって、

 

周囲の環境

(酸性度や酸素濃度)が大きく変化します。

 

それに合わせ、

腸内マイクロバイオータもその組成と数が

大きく変化します(図2─4)。

 

 

 
 
 
 
 
 
私たちヒトの腸内マイクロバイオータの中でも、
 
消化吸収を補助したり、
 
 
免疫を活性化したりする有益な作用をする
 
細菌として、
 
ビフィズス菌や乳酸菌が知られています。
 
 

これらは「善玉菌」とも呼ばれ、

ビフィズス菌は、

先ほどの3のアクチノバクテリア門に、

 

乳酸菌や酪酸を産生する細菌は

1のファーミキューテス門に属します。

 

 

一方、私たちの体に対して悪影響を及ぼす

代表的な細菌として、

 

1のファーミキューテス門に属するウェルシュ菌や

ブドウ球菌などがあり、

悪玉菌」とも呼ばれます。

 

 

そして、

健康なときには大人しくしているけれど、

 

体が弱ってくると、

腸内で悪さをするような細菌も私たちの

腸内マイクロバイオータには存在します。

 

 

このような細菌は、

日和見菌」とも呼ばれ、

 

ファーミキューテス門に属するレンサ球菌や、

 

4のプロテオバクテリア門に属する

毒を持たない大腸菌やピロリ菌、

 

カンピロバクターなどがあります。

 

 

 

<参考:坪井 貴司