2026/2/27

脳神経科学者が明かす 最強の読書術

 
 
 
 
 
 
 
 
 

脳神経科学者が明かす

最強の読書術

 
 
 
 

 

 

 

  1. 読書の二大効果:メンタル改善と認知能力向上(特に紙の本にエビデンスあり)

  2. 紙の優位性:五感を使った記憶定着、ため息による脳血流回復、没入の質

  3. 日本語特有のメリット:表音文字(ひらがな)と表意文字(漢字)の同時処理が高度な脳トレに

  4. 非認知能力への効果:共感回路(ミラーシステム)の活性化、心の理論の発達

  5. ストレス解消メカニズム:自己効力感の獲得、デフォルトモードネットワークの切り替え

  6. 三読法の使い分け:解読(速読)・精読・音読それぞれの脳活性化パターンと用途

  7. 記憶定着の科学:シナプス可塑性、睡眠の重要性、反復学習

  8. 習慣化のコツ:予測装置としての脳を活用、疑問を持って読む能動的読書

  9. 現代における読書の意義:情報リテラシー、精神的自由の回復

 

 

1. 読書がもたらす2つの効果

 

読書が脳に与える影響は大きく分けて2つある。

 

1つ目はメンタル改善効果であり、

読書という行為自体が体をリラックスさせる。

 

2つ目は、昔から言われてきた

「本を読むと頭が良くなる」という効果である。

これは単なる俗説ではなく、

実際に多くのエビデンスが集まってきている。

特に紙の本にはその効果が顕著であることが

科学的に示されている。

 

現代の若い世代において読書離れが

進んでいるというデータがある。

 

小学校1年生から高校3年生までの

約半数が読書時間ゼロという衝撃的な統計が出ている。

 

高校生に至っては、

休日に300分ほどをスマートフォンに費やしているという。

 

この時間の使い方は、

脳の働き方という観点から見ると大きな違いをもたらす。

 


スマートフォンやショート動画を見ている時、

脳は情報に対して受け身の状態にある。

 

短期的には楽しく刺激的だが、

脳が疲労する状態に陥りやすい。

 

一方、読書は自分の読みたいタイミングで

自分の読みたいものを自由に読める。

 

その時間は誰にも邪魔されない没入状態であり、

これが脳にとって非常に良い時間となる。

 

私はこれを「精神的自由」と呼んでいる。

 


 

2. なぜ「紙の読書」が良いのか

 

紙の本について調べてみると、

悪いという結果は1つもなく、

良いことしかないという結論に至った。

 

紙の読書をしている方は、

今自分がやっていることは脳を育むという

意味で非常に良いことなのだと

自信を持っていただきたい。

 


デジタルデバイスでの読書との違いは何か。

 

スマートフォンで本を読む場合、

通知が飛んできたり、

他のアプリが気になったり、

メールをチェックしながら読んだりすることがある。

 

 

脳の「注意リソース」は限られているため、

マルチタスク状態では集中力が保たれない。

 

本来脳にとって良いはずの読書が、

過剰な負荷により疲労の原因となり、

読書が嫌になってしまう

悪循環に陥る可能性がある。

 


紙の本が優れている最大の理由は、

その物理的特性による情報の定着効果にある。

 

脳の記憶は、

いろんなものに関連付けて覚えるという性質がある。

 

紙の本では、

ページの位置(真ん中あたり、右上など)、

挿絵、紙の質感、重さ、新刊の匂いなど、

五感をフルに使って情報を処理している。

 

これに対し、

デジタルデバイスは視覚優位であり、

 

このような複合的な記憶の手がかりが得られにくい。

 


昭和大学の研究によると、

紙の読書とデジタル読書では「ため息の数」に

違いがあるという興味深い結果が出ている。

 

紙の読書の方が理解力が高まるが、

その背景にため息による区切りが関係している。

 

ため息をすることで脳の活動が一回リセットされ、

深い息により脳血流も回復し、

認知機能がリセットされる。

 

スマートフォンでは浅い呼吸になりがちで、

この効果が得られにくい。

 


 

3. 日本語の読書は脳トレ

 

読書時、

脳では複数の処理が同時に行われている。

 

文字情報を処理する視覚野、

音声として理解する聴覚処理部分、

言語を処理するブローカ野や

ウェルニッケ野などが活性化する。

 

興味深いことに、

黙読であっても音を処理する部分が

活性化することが分かっている。

 


日本語の読書が特に脳に良い理由は、

表音文字(ひらがな・カタカナ)と

表意文字(漢字)が混在している点にある。

 

漢字はシンボルであり、

絵文字のようなものなので、

音として理解する前にまず映像として処理される。

 

例えば「桜」という漢字を見ると、

意識しなくても桜の木の映像が心の中に浮かんでくる。

 

同時に、

ひらがなは音韻処理として実際に

音として処理されている。

 


つまり、

日本語を読む際、イメージと音が次々と切り替わっていく。

 

これは非常に器用な脳の使い方であり、

日本語特有の現象である。

 

日本語が読めるのに読書しないのはもったいない。

 

日本語話者は、

普通に母国語の本を読むだけで、

かなり効率的に脳を活性化できる。

 

 

さらに、

東洋の言語は文脈から意味を推論する必要があり

(「橋」と「箸」など)、

推論能力も同時に使われている。

 

これは「空気を読む」能力にも通じる。

 


読書中の脳活動を見ると、視覚野、ブローカ野、

ウェルニッケ野に加え、

 

過去の記憶を処理する側頭葉、

ワーキングメモリーを担当する前頭前野など、

 

脳の広い領域がまんべんなく

適度に使われている。これに対し、

 

動画やスマートフォン使用時は

前頭前野が過剰に働き、

視覚に偏った状態になりやすい。

 

読書は脳の「バランスの良い運動」として

非常に優れたツールなのである。

 

 

4. 読書が育む「非認知能力」

 

読書習慣には二極化が見られる。

 

全員が一様に読まなくなっているわけではなく、

読んでいる子はちゃんと読んでいる。

 

幼少期の読み聞かせ経験が、

その後の読書習慣に大きく

影響することが分かっている。

 

読み聞かせを受けた子や本が多い家庭の子供は、

中学生・高校生になっても読書習慣が継続しやすい。

 


読み聞かせの経験が心地よいものであれば、

脳にとって「快」の記憶となり、

成功体験として刻まれる。その結果、

読書という行為がプラスの感情と結びつき、

 

その後も積極的に楽しんで読むようになる。

 

また、読み聞かせの際の親子間のやり取り

(「これってどういうこと?」

「あなたならどうする?」)が、

社会性や心の発達を促進する。

 


読書は「非認知能力」の育成に大きく貢献する。

 

非認知能力とは、

数値では測りにくいスキル、

すなわち我慢強さ、粘り強さ、やり抜く力、

コミュニケーション力、リーダーシップなどを指す。

 

読書を通じて、

人生を擬似体験できる。

 

小説を読むことで様々な人生を味わえるし、

他者がこの世界をどう見ているかを

文章を通じて直接覗くことができる。

 


脳には「共感回路」(ミラーシステム)があり、

物語を読んでいる時にこれが活性化する。

 

他者の経験を読むことで、

実際にそこにいるような脳の働き方をするため、

 

共感力が高まる。

 

また、「心の理論」と呼ばれる、

他者が自分とは違う心を持っているという理解も深まる。

 

実体験だけでなく、

読書によってこれらの能力を効率よく、

大量に育むことができる。

 

 

5. 読書でストレスが消えるワケ

 

本を読むと癒されるという効果が

科学的に実証されている。

 

複数の海外の大学の研究により、

読書中はストレスホルモンが

減少することが確認されている。

 

2009年の研究では、

わずか6分間の読書でストレスが

約70%軽減したという報告もある。

 

読書のリラックス効果は、

ユーモアや運動に匹敵するレベルである。

 


ストレス解消のメカニズムの1つは

「自己効力感」にある。

 

自分でちゃんとコントロールできているという

感覚が重要で、

 

脳にとって最もストレスになるのは、

今やろうと思ったタイミングで邪魔されることである。

 

読書に没入している時は、

自己効力感が高い状態にあり、

これがストレス解消につながる。

 


もう1つのメカニズムは、

脳の使い方の切り替えである。

 

脳は省エネな臓器であり、

自動運転モードでは「反芻思考」

(過去の後悔と将来の不安でぐるぐる回る思考)が

起きやすい。

 

この時活性化するのが

「デフォルトモードネットワーク」であり、

 

自分に関することを処理する回路と重なっている。

 

脳が疲れると、

この反芻思考が止められなくなり、

過剰な負荷がかかる。

 

メンタルを病んでいる時は、

脳が「働きすぎている」のである。

 


読書に没入することで、

情報を遮断し、

自動運転モードからタスク処理モードへと

脳の使い方が切り替わる。

 

これにより、

脳のぐるぐる(反芻思考)が止まり、

癒された状態になる。

 

また、

読書中は深い呼吸(腹式呼吸に近い状態)

になりやすく、

リラックス状態の表れである。

 

寝る前に本を読むと自然と眠くなるのは、

まさにこのリラックス状態の表れである。 

 

6. 目的で使い分ける3つの読書術

 

読書には3つの読み方があり、

それぞれ脳の使い方や記憶の定着率が異なる。

 

目的や状況に応じて使い分けることが重要である。

 


【快読(速読)】


大まかな筋を押さえながら、

目次や見出し、太字をパッパッと読んでいく読み方。

情報処理として効率的に行えるため、

限られた時間で多くの情報を得たい仕事や

ビジネス目的に適している。

 

ただし、

過去の記憶を思い出さずに処理するため、

定着率は低い。速読の要諦は、

パラグラフの冒頭と最後にまとめられている

要点を拾っていくことにある。

 


【精読】


じっくり丁寧に読んでいく読み方で、

「遅読」とも呼ばれる。

 

一文字一文字、行間まで味わいながら読む。

 

物語や味わい深い文章、

深く理解したい内容に適している。

 

過去の記憶を思い出しながら読むため、

脳の活性化という観点からは基本となる読み方である。

 

著者としても、

読者には精読してほしいと願うものである。

 


【音読】


声に出して読む方法。

音声として聞く効果に加え、

声を発するという運動も加わるため、

脳の広い領域が活性化する。

 

研究データを見ると、

音読時に黙読と比較して活性化した

脳領域は非常に広範囲に及ぶ一方、

 

黙読で音読より活性化した領域はほとんどない。

 

インプットとアウトプットを同時に行うことができ、

記憶の定着という意味でも最も効果的である。

 

他者に聞かせる読み聞かせは、

コミュニケーションの促進にも寄与する。

 

 

7. 読んだ内容を忘れない記憶術

 

脳の記憶には短期記憶と長期記憶があり、

短期記憶を長期化するプロセスが存在する。

 

この長期化(「固着」と呼ばれる)には、

休憩と睡眠が重要であることが

近年の研究で明らかになっている。

 

一冊の本を一気に読んでしまうと、

その間に休憩も睡眠もないため、

忘れやすくなる。何日もかけて読んだり、

繰り返し読んだりすることで、

長期記憶として定着する。

 


脳には記憶の座という特定の場所はなく、

神経回路全体が記憶を担っている。

 

ニューロン同士がシナプスでリレーしており、

このシナプスの伝達効率は常に一定ではない。

 

必要に応じて効率を高めることができ、

一回に放出・受容する神経伝達物質の量が増えたり、

シナプス自体が大きくなったりする。

 

繰り返しの学習がこのシナプス可塑性を促進し、

記憶の定着につながる。

 


睡眠中は脳の老廃物が洗い流されることも

近年の研究で分かってきている。

 

「寝たら負け」という風潮があるが、

記憶の定着という観点からは、

ちゃんと寝た方が良い。

 

一夜漬けでは定着しない。

 

どうしても短期間で覚えなければならない場合は、

解読を何回も繰り返すことが有効だが、

その際も「何回もやる」反復が重要である。

 


本当に覚えたい場合は、

音読が最強である。

私もゼミで音読し、それを録画・配信している。

 

編集作業も含めると何回も繰り返して聞くことになり、

動画が完成する頃には内容がほぼ頭に入っている。

 

読みっぱなしではなく、

アウトプットすることが記憶定着に大きく貢献する。

 

 

8. 読書を習慣化するコツ

 

読書が苦手な人や途中で挫折してしまう人は、

おそらく1行目から精読しようとして

いるのではないかと推測する。

 

まずは大体この本がどういうことを

書いてあるかを把握することが重要である。

 

目次や見出しをパッと読んだり、

後書きから読んだりするのも有効である。

 

後書きには本のまとめが書いてあることが多い。

 


脳は予測する装置であるため、

本の構造を理解した上で

読み始めると安心して読める。

 

多少読み飛ばしてもOKという

姿勢で臨むことが大切である。

 

また、読む前に疑問を持っておくと、

能動的な読書ができる。

 

「この本で自分は何が得られるのかな」

「この章には何が書いてあるのかな」と

考えておくと、

 

その答えを探しながら読むことになり、

受け身ではない読書が実現する。

 

新書のタイトルに疑問形が多いのは、

この原理を活用しているのかもしれない。

 


自分の読んだ記録を可視化するのも

ゲーム感覚で効果的である。

 

読書メーターのようなSNSで

読書記録を共有するのも良い。

 

人に勧められたり強制されたりして

始めた読書は長続きしないというデータがある。

 

自分が読みたい本を、

自分で選んで読むことが、

主体性を育む意味でも重要である。

 

流行っているからとか

ベストセラーだからという理由ではなく、

 

本当に自分が読みたいから読むという

姿勢を大切にしてほしい。

 


人と一緒に読んで感想を

交換するのも効果的である。

 

本屋に人と一緒に行くと、

その人の価値観が垣間見えて楽しい。

 

自分の本棚を公開するのは恥ずかしさもあるが、

そういう自己開示も含めて、

読書はコミュニケーションツールとして優れている。

 

 

9. なぜ今、読書が必要なのか

 

現代は情報過多の時代であり、

何が自分にとって重要で

重要でないかを見極める

「情報リテラシー」が求められている。

 

脳は本質的に刺激に飢えており、

センセーショナルなものに飛びつきやすい。

 

そのため、

フェイクニュースに騙されやすい傾向がある。

 

このような時代において、

脳の持久力、ストレス耐性、

長期的な意味での本当の知性を育むツールとして、

読書は非常に優れている。

 


読書は簡単に始められて、

身近にあるものでこれほど脳に良いものはない。

 

しかも日本語が読めるということ自体が、

脳科学の観点からは大きなアドバンテージである。

 

表音文字と表意文字を同時に処理する

日本語の読書は、

 

それだけで高度な脳のトレーニングになっている。

 


娯楽としての読書でもいいし、

意図的に脳に良いからやるという読書でもいい。

 

実際に脳に良いという

エビデンスが蓄積されているのだから、

読書を生活の中に取り入れてみることを勧めたい。

 

数を競う必要はない。

 

ファスト読書で5分、

ショート動画で1分で本の内容を

知ることもできる時代だが、

 

本当に自分が読みたい本をゆっくり

時間をかけて読むという読書も

傍らに持っていてほしい。

 

私もゼミでは1冊の本を1年かけてじっくり読んでいる。

 


忙しいと自分の趣味や楽しみのためだけに

読むことに躊躇する方もいるかもしれない。

 

しかし、

脳の健康維持のための基本運動として捉えれば、

好きな本を少しずつでも毎日読むことは、

 

決して贅沢ではなく、

むしろ必要なことである。

 

特に紙の本が良いというエビデンスが

多く出ているのだから、

精神的自由を取り戻すという意味でも、

読書を生活に取り入れていただければと思う。

 

 

おわりに

本研究ノートでは、

脳神経科学の観点から読書の効果を概観した。

読書は単なる情報収集の手段ではなく、

脳の広い領域をバランスよく活性化させ、

メンタルヘルスを改善し、非認知能力を育み、

記憶を定着させる、極めて優れた脳のトレーニングである。

 

特に紙の本、特に日本語の本を読むことは、

その効果を最大限に引き出すことができる。

今こそ、精神的自由を取り戻し、

脳の健康のために、

読書を日常に取り入れていただきたい。

 

 

 

 <参考:脳神経科学者、毛内 拡>