2025/6/22

首と顔をマッサージ→ 脳の老廃物の排出を促進、 認知症リスク低下 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

首と顔をマッサージ→

脳の老廃物の排出を促進、

認知症リスク低下 

マウス実験で検証 

 

韓国チームがNatureで発表

Innovative Tech

 
 

このコーナーでは、

2014年から先端テクノロジーの研究を

論文単位で記事にしている

Webメディア「Seamless

(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。

 

新規性の高い科学論文を山下氏が

ピックアップし、解説する。

 

 

 

韓国科学技術院(KAIST)などに所属する

研究者らがNature誌で発表した論文

Increased CSF drainage by non-invasive

manipulation of cervical lymphaticsは、

 

 

首と顔を優しくマッサージするだけで

脳の老廃物排出低下を改善できることを

発表した研究報告だ。

研究チームは、

マウスを使って脳脊髄液がどのように

体外へ排出されるかを詳しく調べた。

 

蛍光物質を使った追跡実験により、

脳脊髄液は頭蓋骨の底から外へ出た後、

 

目の周り(眼窩周囲リンパ管)、

鼻(嗅覚・鼻咽頭)、

口の天井部分(硬口蓋)のリンパ管を通って、

 

首の浅い部分(顎下)にあるリンパ管へ

流れ込むことが分かった。

 

この経路は、首のリンパ節へ向かう

脳脊髄液の約半分を運んでいた。

 

 

 

 

 脳脊髄液の排出の概要
 
 
 
 
 
 
 
 蛍光物質で可視化された脳脊髄液が
 
頸部リンパ管を通って顎下リンパ節へ流れる様子
 
 
 
 

80~95週齢の高齢マウスでは、

8~12週齢の若いマウスと比べて、

 

鼻のリンパ管が約80%も減少していた。

 

その結果、

脳脊髄液の排出量は約30%低下。

 

興味深いことに、

高齢マウスの首のリンパ管自体は正常に

機能していたが、

 

その上流にある鼻や口蓋のリンパ管が

減少していることが排出低下の主な原因だった。

 

 

そこで研究チームは、

首の浅い部分にあるリンパ管が

皮膚のすぐ下を通っていることに着目。

 

刺激装置を開発し、

顔と首の皮膚を優しくマッサージ

するような刺激を与えたところ、

 

脳脊髄液の排出量が2倍以上に増加した。

 

刺激の強さは0.01~0.02kgfという軽いもので、

皮膚を傷つけることなく効果を示した。

 

 

 

 
高齢マウスの脳内に蛍光物質を注入後、
顔面と頸部の皮膚に機械的刺激を加えて
脳脊髄液の排出を促進する実験プロトコルを示す図

 

 

 

この方法を高齢マウスで試したところ、

脳脊髄液の排出量が約2.8倍に増加し、

 

若いマウスとほぼ同じレベルまで回復した。

 

効果は刺激を止めた後も続き、

4日間毎日刺激を行っても効果は維持できた。

 

 

刺激による効果の仕組みは、

皮膚を通じてリンパ管を外から圧迫することで、

 

中の液体の流れを促進するというものだった。

 

リンパ管は自分でポンプのように収縮する

自発的な能力を持っているが、

 

刺激はこの自発的な収縮にはほとんど

影響を与えず、

単純に外からの圧力で流れを助けている。

 

 

この発見は、

加齢による脳の老廃物排出低下を、

皮膚への優しい刺激という簡単な方法で

改善できる可能性を示している。

 

 

<参考:>