2025/6/14

脳はどのように老廃物を排出しているのか…グリア細胞と睡眠がカギ

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

脳はどのように老廃物を

排出しているのか…

グリア細胞と睡眠がカギ

 

 

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良質で適切な時間の睡眠は頭をスッキリさせ、

仕事や遊びのパフォーマンスをアップさせる。

 

なぜか。

 

ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学

医学部客員教授の根来秀行医師に聞いた。



私たちの体は毛細血管とリンパ管が張り巡らされ、

全身の組織は細胞外液である間質液に浸されている。

 

動脈と静脈間にある毛細血管は、

そこを流れる血液中の栄養や酸素を

細胞に運ぶと同時に細胞の活動で

発生した老廃物や二酸化炭素などを

回収する役割を果たす。

 

また、リンパ管は間質液に含まれる老廃物を回収する。

リンパ管に入った間質液はリンパ液と呼ばれ、

リンパ液に含まれた老廃物は最終的に静脈に戻る。

それが腎臓や肝臓でろ過、代謝され、

 

尿や便となって体外に排出される。

 

これが体内で行われている基本的な

老廃物の回収と排出の仕組みだ。

では、脳内のゴミはどうか?

 



「脳には1分間に700ミリリットルもの血液が供給され、

莫大なエネルギーを消費しています。

 

その分、

脳内には多くの老廃物がたまっていくのですが、

 

脳内にはリンパ管は存在せず、

脳の老廃物を排出する仕組みは長らく謎でした。

 

2013年に米国ロチェスター大学メディカル研究チームが、

睡眠中にグリア細胞が縮小し、

細胞間に隙間を作ることで老廃物の排水路を形成。

 

動脈周囲のスペースから流れ込んだ

脳脊髄液が老廃物を洗い流して静脈周囲の

スペースを使って脳外に排出すると報告したのです。

 

この仕組みは『グリンパティックシステム』と命名され、

 

深いノンレム睡眠時に集中的に

働くことが明らかになっています。

 

このとき細胞の修復・再生に欠かせない

成長ホルモンの分泌も同時にピークを迎えるのです」 

 

 

脳内には1000億個の

神経細胞(ニューロン)が存在する。

 

脳内の情報はすべてニューロンを介して

電気信号により伝えられる。

 

かつてはそう考えられていた。

 

しかし、

ニューロンは脳内の全細胞の15%しかない。

 

残りはグリア細胞と呼ばれる、

電気活動を行わないサイレント細胞だ。

 

そのためグリア細胞はニューロンの間を

埋める梱包材的存在に過ぎないとされていた。



ところが、

近年の研究でグリア細胞はニューロンを

効率的に働かせるために多くの活動を

担っていることがわかった。

 

そのひとつが脳内の老廃物除去である。



「ニューロンは細胞体とその突起である

神経線維からできています。

 

突起は樹状突起(神経伝達の入力部位)と

軸索(同出力部位)の2種類があります。

 

グリア細胞にはオリゴデンドロサイトと呼ばれる

細胞があり、

ニューロンの電気活動を安定させ、

 

神経伝達速度を上げるために軸索を

ミエリンと呼ばれる絶縁体のさやで包み込んでいます。

 

このミエリンが破壊されると脳や脊髄における

神経活動が障害され、

 

運動や感覚麻痺が起こり、

小脳失調によりバランスが失われ、

歩行困難にな

 

 

■アインシュタインの脳には

グリア細胞が2倍多かった



グリア細胞には、

中枢系の免疫を担当するミクログリア細胞がある。

 

中枢神経系のなかを移動しながら、

サイトカインの放出、異物や死んだ細胞の貪食、

シナプス(神経細胞間や他細胞間で形成される、

シグナル伝達などの神経伝達に関わる接合部分)

の剪定などを行う。



「グリア細胞のなかで最近とくに注目されているのが

『アストロ細胞』です。

 

グリア細胞のなかで最も数が多く、

星の形などをしています。

 

神経細胞に栄養を与え、

過剰となった神経伝達物質などを速やかに

除去することで、ニューロンの活動と生存をサポートしています。

 

グリンパティックシステムに関わっているのも

アストロ細胞です」

 

かつてはニューロンの梱包材に過ぎない

黒子役として扱われてきたグリア細胞だが、

 

いまでは脳の主役として注目されている。

 

実際、

20世紀最大の天才のひとり、

アインシュタインの脳に関して

興味深い報告がなされている。



 

アインシュタインの脳は亡くなった病院の

病理医により盗まれ、

 

40年以上経過してから天才の脳の

特徴を知ろうと何人かの研究者が切り分けられ研究され、

 

複数の論文が発表されている。

 

なかには47歳から80歳の男性から採取した

11の脳の同一部位からなる

対照群のデータと比較したものがある。

 

ニューロンは何ひとつ差異は見られなかったが、

グリア細胞の数は2倍近く多かったという。 

 

この報告に対して、

アインシュタインの死亡時の年齢が

76歳なのに対照群に年齢幅があったこと、

 

対照群の脳は新鮮なのに対して

アインシュタインの脳は40年以上前のものだったこと、

などから科学的分析ではないとの批判がある。

 

 

 とはいえ、その後の研究を照らし合わせても、

グリア細胞が脳の働きをサポートし、

睡眠中の刺激により脳の老廃物を

洗い流していることは間違いない。

 

それだけ良質で適切な時間の睡眠は必要ということだ。

 



では、

グリア細胞をしっかり働かせる睡眠とは

どういうものなのか?

 

                 

 

<参考:>