「たとえば、全宇宙が1個のバケツだと
考えてみたらどうだろう?」
「猫のかわりに人間を
入れてみたらどうだろう?」
空間、重力、量子、確率……
目に見えず、
手でも触れない未知のものに
囲まれている人類は
とりあえずどこかに歩きはじめるため
思考実験によってその正体の見当をつけてきた
思考実験とは
自然を拷問にかけ、
極限まで追い込んで隠れた真理を
「白状」させる行為だ。
仮説をどう立てるかも、
設定をどう変えるかも、
頭の中では自由自在。
だから思考実験は奇想天外で面白い。
人生の岐路でも役に立つその手法を
思考実験の「名作」を通して学ぼう
弁護のための思考実験
アインシュタインと
ボーアの光子箱
では、
量子力学についての思考実験を見てみましょう。
それは「光子箱」と呼ばれるもので、
ボーアとアインシュタインが激しく論争したときに
双方から提出された思考実験です。
よく知られているように、
アインシュタインが1921年に
ノーベル物理学賞を受賞したのは、
有名な相対性理論によってではなく、
「光量子仮説」が評価されてのことでした。
それは光電効果という奇妙な現象について、
光は飛び飛びのエネルギーをもつ粒子の
ようにふるまうからだと説明するもので、
これが量子力学の構築に
絶大な貢献をしたのです。
だからアインシュタインこそは
量子力学の生みの親の
一人といってもよいのですが、
それにもかかわらず、
彼はその理論の根本をなす不確定性関係
という考えがどうしても受け入れられず、
量子力学に強い嫌悪感を示しました。
とくに、
粒子の波動性と粒子性、
位置と運動量などが同時に確定できないのは
それぞれが補い合う関係にあるからで、
そこにはあまりとらわれなくてよいという
「相補性原理」を唱えて量子力学の
カリスマとなっていたボーアは好敵手でした。
アインシュタインは不確定性関係を打ち破るため、
国際会議でボーアと顔を合わせるたびに
得意の思考実験を仕掛けて挑みかかりましたが、
そのつど、
ボーアはそれを論破してみせました。

雪辱を期したアインシュタインが1930年、
第6回ソルベー会議でボーアにたたきつけたのが、
この光子箱の思考実験でした。
量子力学では、
ハイゼンベルクの不確定性関係と同じように、
時間とエネルギーの間にも、
Δt・ΔE≳h
(tは時間、Eはエネルギー、hはプランク定数)
という関係があり、
どちらかを確定するとどちらかは
確定できないとしています。
単純に考えれば、
位置は3つの次元と一つの時間という
4つのパラメーターで指定され、
運動量やエネルギーもこれら4つに結びつけて
記述されるので、
ハイゼンベルクの不確定性関係が
位置と運動量の関係なら、
残りの時間とエネルギーの間にも
同様の関係があると類推できる気がします。
実際に、
この関係を用いて「短時間ならある有限の
エネルギーをもつ粒子が存在できる」
などという説明もしたりしますので、
この関係が本当に成り立つのかは、
きちんと考えておかなくてはならないことでもあります。