2023/12/18
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エネルギーも地産地消 太陽光から水素を作り続ける「人工の木」 |
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エネルギーも地産地消太陽光から水素を作り続ける「人工の木」
未来のエネルギー、 グリーン水素のコストと輸送の問題を 一気に解決し、 普及を加速させるかもしれない 高効率ソーラー水素システムを、 スイスのスタートアップが開発した。
来年2月に国内企業で実証実験を開始するが、 水素への転換を模索する他国の企業も関心を寄せている。
<address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50"> </address><address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50"> スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のキャンパスに、</address><address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50"> </address><address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50">直径7メートルのパラボラ鏡が空に向けて設置されている。</address><address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50"> </address><address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50"> </address><address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50">人目を引くこの物体は電波望遠鏡のようにも見えるが、</address><address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50"> </address><address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50">集めているのは宇宙からの電波ではなく太陽光だ。</address><address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50"> </address><address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50">その太陽光を使って、</address><address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50"> </address><address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50">装置内の反応器で水から水素と酸素を作っている。</address><address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50"> </address><address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50"> </address><address class="si-detail__author" data-uk-scrollspy="hidden: false; repeat: true; offset-top: -50"> </address> EPFLの再生可能エネルギー科学工学研究所の ソフィア・ハウッセナー准教授は、 同ソーラー水素(太陽光を利用した水素製造) システム全体の実証実験はこれが初めてだと話す。
実験室の装置とは異なり、 実証実験用のシステムには水素の 持続的な生産に必要な機能が全て搭載されている。
なぜエネルギー転換に水素が不可欠なのかシステム名は「アルブ(Arb)(ラテン語で「木」の意)」。 太陽光から水素を作る「人工の木」だ。
その基幹技術の特許権はEPFL発の スタートアップ「ソーハイテック(SoHHytec)」が有する。
同技術により、未来のエネルギーと 期待されるグリーン水素の普及のネックとなっている 問題のうち①高額な製造コストと ②輸送の難しさを解決できるという。
アルブの利点は、 水素を利用する場所の近くで安価に 製造できることだ。
現在世界で生産されている水素の 96%はメタンや石炭などの 化石燃料由来の原料他のサイトへから作られる グレー水素だが、 アルブの技術を使えば、 グレー水素と同程度の低コストで クリーンな水素を生産できる。
ソーハイテックは、 同技術で300万フラン(約5億700万円) を超える資金を調達した。
主な出資元は、 再生可能な水素で二酸化炭素(CO<sub>2</sub>) 排出量の削減を目指す金属・鉱業、エネルギー、 ロジスティクス(物流管理)分野の民間企業だ。
そして10年間に及ぶ研究開発を経て 「人工の木」で本格的に水素を製造する準備が整った。
「人工の木」が水素を作る仕組みアルブは、 パラボラ鏡で反射させた太陽光を、 焦点位置に設置した反応器他のサイトへに集める。
反応器の中は光電気化学セル (PEC)と呼ばれる装置であり、 集積した太陽光を利用した光電気化学反応で 水分子(H<sub>2</sub>O)を水素分子(H<sub>2</sub>)と酸素分子(O<sub>2</sub>)に 分解する。
この化学反応の過程は、 木や植物が行う光合成の仕組みと似ている。
アルブはパラボラ面が常に太陽に向くように回転し、 太陽光を最大限に集める(下の動画を参照)。
外部電源に接続すれば、曇天や夜間でも水素を製造できる。
同システムの特徴は、 熱と、反応過程で発生する酸素を回収できる点だ。
熱は建物の暖房や産業用機器の加熱に使える。
酸素は廃棄物と思われがちだが、 病院で呼吸不全の患者の治療などに利用できる。
通常のグリーン水素は、 太陽光や水力で発電したエネルギーを使った 水の電気分解で製造する。
この従来方式と比べ、 太陽光をそのまま化学反応に利用する アルブの水素製造法は効率が高く、 熱や酸素も含む、 太陽光から抽出する全てのエネルギーを考慮すると、 太陽光からのエネルギー変換効率は 8割近いとソーハイテックは主張する。
1日で車1台分アルブで製造した水素はそのまま利用できる。
ソーハイテックの共同設立者の サウラブ・テンブルネ氏によれば、 アルブの水素は純度99%以上で、 かつ反応器内で圧縮されているため、 すぐに利用可能だ。
試作機の1日当たりの水素製造量は約500グラム。
電気自動車が約70キロメートル走行できる エネルギーに相当する。
光化学反応を利用したグリーン水素製造法は 数十年前から存在する。
だがコストや輸送などの様々な問題が 実用化への壁となっていた。
グリーン水素について15年以上研究を続けている カナン・アカー助教(オランダ・トゥエンテ大学、化学工学)は swissinfo.chに対し、 アルブ方式は持続可能なエネルギーの 問題解決に向けた大きな足がかりとなるとし、 「現地で生産可能なため、 長距離輸送が要らなくなり、 便利で将来的に性能を広げやすくなる」 とメールで回答した。
アルブの耐久年数はおよそ 20年と見積もられている。
水素の生産量を増やすには、 パラボラ面の直径を長くするか、 「人工の木」の本数を増やせばよい 国内外の企業に売り込みアルブの最初の導入実験は来年2月、 スイス南西部ヴォー州エーグルにある 鉄鋼企業ツヴァーレン&マイヤーで開始される。
同社の金属加工工場の横に、 直径9メートルのパラボラ鏡を持つ 「人工の木」を5本設置し、 いわばアルブの小さな「森」を作る。
1本当たりのパワーは約20メガワット。
同社のクリスチャン・シャルパン副社長によると、 このアルブ5本で同社の水素需要の 約2割を賄えると見込まれ、 熱は給湯に、 酸素は地域の病院に提供するという。
ソーハイテックは同技術の輸出にも取り組む。
例えば米カリフォルニア州にアルブ1000本を 設置したパークを建設する計画がある。
これで年間2400トンの水素を製造できる。
1日当たりの走行距離500キロメートルの トラック150台分の燃料に相当し、 大型輸送へのグリーン燃料供給が可能となる。
テンブルネ氏は、 集積した太陽光のみを利用する同社の技術を導入すれば、 米国でのグリーン水素価格は、 同程度の1キロ当たり2.5ドル(約370円)まで 下がるとみている (スイスのグリーン水素の価格は現在、同13〜23フラン)。
ツヴァーレン&マイヤーはアルブが製造する 酸素も購入する予定だが、 酸素を買いたい病院が近隣にあれば、 水素のコストを更に下げられる。
ソーハイテックはインドの協力企業とも 話し合いを進めている。
例えば、 トラックや列車のディーゼルを水素利用に 置き換えたい化学メーカーや運輸業などの 企業が関心を示しているという。
導入に適した条件この種の技術が成功するかどうかは 導入条件次第だと、 アカー氏は指摘する。
例えば、 ソーラー水素システムの効率と実現可能性は、 地理的・気候的条件によって大きく左右されるとし、 「太陽放射照度の高い地域ほど、 より多くの恩恵を受けるが、 日照が不安定な地域ではうまく機能しない 可能性がある」とコメントした。
アルブシステムの導入には、 既存の工業インフラを適合させる必要がある。
従って、企業側は、設備投資に係る費用を考慮し、 計画を慎重に検討すべきだとアカー氏は言う。
今のところソーハイテックは 産業部門への導入に注力する。
関心ある企業は同社インフラに投資したり、 水素を定額で購入する長期契約を結んだりできる。
一方、 住宅への導入も将来的には可能かもしれない。
現時点では住宅地での水素利用はまだ珍しく、 自治体による規制も厳しい。
だがテンブルネ氏は 「戸建用の小型のパラボラ鏡を裏庭に設置し、 家庭で使うエネルギーと熱を 生産する未来は想像できる」と思い描いた。
<参考:佐藤寛子>
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