地球全体が凍結していた過去
近年は地球温暖化が進んでおり、
生態系や環境に影響を及ぼしています。
温暖化は人間活動が要因ですが、
地球の長い歴史を振り返ると、
これまでに何度も地球の環境は
大きく変わってきました。
その大きな変動の中で、
実は地球全体が凍っていた時代があるのです。
地球全体が凍結したことを
「スノーボールアース(全球凍結)・イベント」
と呼んでいます。
一番古くて約23億年前、
次いで約7億年前と約6億万年前の、
少なくとも3回の全球凍結が
起こったといわれています。
マイナス40度~マイナス50度の地球
なぜ、
過去の地球の状態を把握することが
できるのでしょうか。
地球の過去を知るには、
岩石や地層から過去の地磁気を測定する
「古地磁気測定」という方法があります。
地磁気とは地球が持つ磁気や磁場のことです。
岩石などに残留する磁気を調べることで、
当時の地球の情報がわかります。
古地磁気測定により、
全球凍結が起こった証拠が見つかりました。
通常は高緯度域で形成される
氷河性堆積物の地層が、
赤道域で見つかったのです。
つまり、
氷床や海氷が、
地球で最も暑いはずの赤道域まで広がり、
地球全体を覆っていたということです。
全球凍結が起きた地球の平均温度は
マイナス40度~マイナス50度ほどで、
現在の平均気温である約14度と比べると
非常に低温だったことがわかります。
海の水は凍り、
海氷の厚さは約1000mだったと
考えられています。
全球凍結の理由とは?
なぜ全球凍結が起こったのか。
その原因は未だわかっていませんが、
地球を温める効果のある
「温室効果ガス」が何らかのきっかけで
急激に減ったため、
赤道域まで凍ってしまったようです。
反対に、
全球凍結が解消されたのは、
温室効果ガスが増えたためと考えられます。
火山活動によって火山ガスが放出され、
その中に含まれる二酸化炭素などの
温室効果ガスが空気中に蓄積されて
地球が温まっていきました。
全球凍結から脱出した地球は、
平均気温が約50~60度に達したと考えられ、
地球環境は急激に変化しました。
地球の表面が全て凍ってしまうと、
地表の水もなくなってしまうため、
生物にとっては生命をおびやかす危機的な出来事です。
しかし、
約6億年前に存在していた藻類のような
真核生物は、全球凍結後も生き延びています。
どのように生物は生き延びたのでしょうか。
この疑問はまだ解決できていません。
生物の大進化!?
赤道域は完全には凍結していなかった、
火山の周辺では地熱によって氷が融けた
場所が存在していたなど、
いくつかの仮説があり、
そこで生物は数百年~数千年続いた
全球凍結の間も生存していたと考えられています。
さらに、
全球凍結から脱出し、
地球環境が激変したことで、
生物の大進化が起こったともいわれています。
約23億年前のスノーボールアース・イベント直後は
真核生物が出現、
約6億年前のイベント直後は
多細胞生物が出現したと考えられています。
全球凍結は地球の歴史の一部分です。
他にも地球では大規模な変動があった末に、
現在のように生物にとって
恵まれた環境ができています。
自然の偉大さを感じるとともに、
人類の進化は地球の変動のうちの
小さな奇跡のように感じます。
【参考文献】
『46億年の地球史:生命の進化,
そして未来の地球』
(田近英一著、知的生きかた文庫、2019)
“全球凍結と生物進化”田近英一