1喧嘩はするな、
2意地悪はするな、
3過去をくよくよするな、
4先を見通して暮らせよ、
5困っている人を助けよ、
あなたなら出来ます応援しています
happy&smile by サロンデイレクターKai
ホームページ
美容室 Happy&Smile-トップページ (p-kit.com)
フェイスブック
https://m.facebook.com/happyandsmilehairsalon
ブログ
https://happy-smile.p-kit.com/userblo
|
2025/7/6
|
|
最初の生命はどこで 生まれたのか? 「海底熱水説」 唯一最大の弱点 「ウォーター・パラドックス」を 解決する新説とは |
|
最初の生命はどこで生まれたのか?「海底熱水説」唯一最大の弱点「ウォーター・パラドックス」を解決する新説とは渋谷 岳造 海洋研究開発機構 主任研究員 最初の生命はどこで生まれたのか? この大いなる謎は長年、研究者たちを悩ませてきました。
これまでにさまざまな説は提唱されましたが、 どれにも強みと弱みがあり、 決め手に欠くものでした。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)超先鋭研究開発部門では、 生命の起源や極限環境を生きる微生物についてなど、 さまざまな研究が行われています。
同部門の渋谷岳造(しぶや・たかぞう)主任研究員らは、 生命の生まれた場所として提唱されている 「海底熱水説」の最大にして唯一の弱点と言われてきた 「ウォーター・パラドックス」を解決する 「液体/超臨界CO₂仮説」を発表しました。
この「液体/超臨界CO₂仮説」とは何か? そして、 生命が誕生した場所はついに特定されるのか? この仮説を提唱した渋谷主任研究員に話を聞きました。
最初の生命は40億年前にはいた!まず、地球で生命が誕生したのは、 いつごろですか?
およそ40億年以上前ですね。 「冥王代」とよばれている時代です。 約40億年前の古い地層から、 生命の痕跡が見つかっています。
あまりに古いのでどんな生物かはわかりませんが、 生物に由来する炭素が岩石の中に残っているんです。
それより古い時代には、 まだ生物はいなかったのでしょうか?
そもそも40億年前よりも古い時代の 岩石は残っていないので、 たしかめようがないんです。 地球誕生と海のはじまりの地球史地球が誕生したのが約46億年前だと考えられています。
誕生から5〜6億年、 つまり40億年前までの時代が冥王代とよばれています。
そのころの岩石は、 地球内部に沈んでしまったりしていて、 地上にはほぼ残っていないんです。
とくに、冥王代最初期の地球は、 小天体が何度も地球にぶつかって、
表面がドロドロに溶けた熱いマグマに覆われた状態で、 これは「マグマオーシャン」とよばれます。
![]() 図1:地球の形成から生命誕生
小天体が衝突しない期間が長く続くと、 マグマオーシャンが冷えて固まります。
さらに大気上層の温度が400℃を下回ったところで、 最初の雨が降ります。
しかし、 この雨は地表に降り注ぐ前に蒸発してしまいます。
さらに大気の温度が下がり、 地表の温度が400℃を下回ったところで、 はじめて地表に雨が降ったといわれています。
しかし、 この雨も蒸発したり地面に沁み込んだりして すぐに消えてしまったでしょう。
だんだんと地球の温度が下がると、 雨が水たまりになり、 やがて海ができました。
最初の海は、 少なくとも地球が生まれてから2億年後の 44億年前には誕生したといわれています。
しかし、 この最初の海もふたたび小天体が 衝突するなどして蒸発してしまったかもしれません。
大気が冷えて海ができては、 小天体の衝突によって干上がるということが、 何度か繰り返されたといわれています。
しばらくして小天体の衝突がおさまり、 ようやく海が安定して存在できるようになりました。
こうして地球の環境が落ち着いたところで、 生命が誕生したと考えられています。
最初は“不完全な生命”が生まれた?最初に生まれた生命は、 どんなものだったのでしょうか?
どんな姿形をしていたのかはまったくわかりませんが、 生命としての最低条件を満たす 原始的なものだったはずです。
その条件とは、
の3つです。
膜で自分と外界をへだてることで、 細胞のような空間を作り出すことができます。
膜の内部で何らかのえさからエネルギーを取り出して活動し、 自分の分身や子孫を残す。
一般的には、 こういったことができると生命であると言えます。
いきなりそんな高度なことができる 生命が生まれたのでしょうか?
最初のころは不完全な生命が生まれては消えて、 試行錯誤を繰り返すうちに3つの条件を そなえた生命が誕生したんじゃないかと考える人もいます。
たとえば、 膜があってエネルギー代謝はできるけど、 自分の分身を残せずに一代限りで 終わってしまうようなものですね。
膜が最初にできたとか、 分身や子孫を残すための 遺伝子のようなものが最初にできたとか、 最初の生命がどうやってできたのかについては、 いろんな説があります。
まだまだわかっていないことだらけなんです。
どんな環境で生命は誕生したのか?最初の生命は、 どんな場所で誕生したと推測されますか?
先ほどの条件を満たす生命が誕生するためには、 まず水が必要です。
カラカラに乾いた環境では、 エネルギー代謝もできませんから。
温度も、 水が凍ってしまうほど低温だとダメですし、 高すぎても生命は生まれないでしょう。
120℃ぐらいまでなら生きていられる細菌がいますが、 その温度よりも低い方が良いでしょうね。
![]() 図2:122℃の温度でも生育できる 超好熱菌「メタノパイラス・カンドレリ」
あまりに極端な酸性やアルカリ性でも 生命は生まれないでしょう。
圧力が高すぎる環境も良くないとは思いますが、 どんな深海にも細菌や動物などがいますから、 水圧が高いことは、 それほど影響はないと思います。
生命誕生の重要な条件とは生命誕生のために、 とくに重要な条件はありますか?
重要なのは、 エネルギー源になる物質が周囲にたくさんあることでしょうか。
私たち人間は動きまわって食べ物を探して、 食べて消化してエネルギーを 取り出すことができますけれども、 最初に生まれた原始的な生命は そんなことはできないはずです。
周囲の環境にすごく依存するので、 まわりにえさが豊富にあるところでないと 生命は誕生しないはずです。
これはほとんどの研究者が同意する点だと思います。
最初の原始的な生命の 「えさ」とは何なのでしょうか?
人間にとっては炭水化物などがエネルギー源になりますが、 原始的な生命にとってのエネルギー源とは 「還元的な物質と酸化的な物質」のことを指します。
具体的には、 水素(H₂)と二酸化炭素(CO₂)などです。
これらの物質があると酸化還元反応が起こって、 直接的にエネルギーを取ることができるんです。
生命誕生の場所は、陸? 海? それとも宇宙!?40億年前の地球で、 生命誕生の条件を満たす場所はどこにあったのでしょうか?
さまざまな説がありますが、 陸上だと「干潟」や「温泉」、 そして海だと海底にある「熱水噴出孔」になるでしょう。
ちょっと変わった説だと、 「宇宙から飛来した」という説もあります。
たとえば、 火星などのほかの惑星で生命が誕生して、 それが岩石にくっついて、 隕石として地球に飛来したという説です。
![]() 図3:カリブ海の深海底にある熱水噴出孔
宇宙空間を生命が移動できるんですか?
火星などから隕石は飛来していますし、 原始的な生物なら宇宙空間を旅しても 死なない可能性がありますから、 理論的には宇宙飛来説もあり得ます。
しかし、この説は検証が難しいんですね。
ただ、最近では宇宙探査が進んできて、 地球以外で生命の生育に適した環境も見つかっています。
たとえば、 土星の衛星 「エンセラダス」(エンケラドス、 エンケラドゥスともよばれる)などです。
そこで生命が誕生する可能性があるのか?
生命の材料となる有機物ができているのか?
といった研究は、 日進月歩で進められてきています。
図4:渋谷さんの研究室では、 土星の衛星「エンセラダス」の海底下を再現し、 約200℃、200気圧で海水と鉱物がどのように 反応するのかを再現する実験が行われていた 有力な説は「陸上温泉説」「海底熱水説」とくに有力な説はどれですか?
今、支持する人たちが多いのは、 「陸上温泉説」と「海底熱水説」の二つでしょうね。
おそらく海底熱水説のほうが、 支持する人は多いと思います。
それぞれどんな説でしょうか?
陸上温泉説は、 その名のとおり、 火山地帯でわき出る温泉やその周辺で 最初の生命が生まれたという説です。
![]() 図5:米国 イエロースートン国立公園の熱水泉
一方の海底熱水説は、 海底の熱水噴出孔の近くで生まれたという説です。
熱水噴出孔は、 海底の岩石にしみこんだ海水が海底火山の熱で温められて、 海底の裂け目から噴出する場所です。
熱水と周囲の冷たい海水が混ざって、 生命が誕生するのにちょうどいい水温になります。
熱水噴出孔は、 1977年にガラパゴス諸島近くの海底ではじめて見つかりました。
それ以降、 海底火山の活動が活発な各地の海底で さまざまなタイプのものが見つかっています。
それぞれの説に強みと弱みがあるどちらの説が優勢でしょうか?
どちらの説にも強みと弱みがあって、 決め手に欠ける状態ですね。
たとえば陸上温泉説は、 環境の不安定さが一番の弱点だと言えます。
40億年以上前の地球には、 そもそも大きな陸地がほとんどなかった 可能性が高いと言われています。
もし陸地ができたとしても、 プレートテクトニクスによってまた沈みこんでしまったり、
大きな隕石が落ちてきた衝撃で、 溶けてなくなってしまったりすることが十分にあり得ます。
また、昔の地球には、 今よりも格段に強い紫外線が宇宙から降り注いでいましたから、 地上は生命にとって過酷な環境でした。
いま挙げた陸上温泉説の弱点は、 海底熱水説だとすべて解決されます。
熱水噴出孔は一度できたら比較的長く存在しますし、 深い海の底までは隕石も有害な紫外線も届きません。 環境としてはかなり安定しています。
![]() 図6:最初に発見された熱水噴出孔
さらに冥王代には、 原始的な生命のエネルギー源となる 水素が豊富に含まれる熱水噴出孔がたくさんありました。
現生の微生物の遺伝情報を分析すると、 おそらく最初に生まれた生物は、
水素をエネルギー源とする 微生物なんじゃないかと推測されています。
最初の生命がエネルギー源にした 可能性が高い水素が豊富にある環境って、 ほぼ熱水噴出孔だけなんです。
冥王代の陸上の温泉では、 まず水素は出ません。
この点は、 海底熱水説の一番の強みでしょうね。
海底熱水説の弱点「ウォーター・パラドックス」お話を聞くと、 海底熱水説のほうが有力な感じがします。
そうですね。 実際に非常に有力な説だと思っています。
ただ、海底熱水説にも最大にして 唯一といえるような弱点があります。
それは「ウォーター・パラドックス」とよばれるものです。
先ほど、 最初の生命が誕生するためには 水が必要だと言いました。
ところが生命を形作る有機物を作るためには、 実は水がないほうがいいんです。
水があると、 有機物が合体して大きな分子になろうとする 反応を邪魔してしまうため、 生命の材料が作られにくいんです。
熱水噴出孔は海底にあるので、 もちろん周囲は水だらけです。
ちょうどいい水温でエネルギー源も豊富、 さらに環境も安定しているんですが、 生命の材料を作る反応を大量の水が邪魔をする。
この矛盾点がウォーター・パラドックスであり、 海底熱水説の大きな弱点なんです。 やはり陸上温泉説なのか?生命が生まれる直前までは水がない環境がよくて、 生命が生まれたあとは水がある環境がよいので、
水のある環境とない環境がとなり合わせに なっているのが生命の誕生にとっては理想的です。
水がある環境とない環境の境界付近で 最初の生命が生まれたんじゃないかと私は思っています。
陸上温泉説は、 その点はクリアしているんですか?
温泉はそもそも陸にある水たまりなので、 水と陸地との境界があります。
環境が不安定なために、 水が干上がったりすることもあるでしょう。
水がある環境とない環境が 空間的・時間的にとなり合っているので、 ここは陸上温泉説の強みと言えるでしょう。
海底熱水説の弱点を克服する新たな仮説2022年11月に、 生命の起源に関する新たな説を発表されましたね。
海底熱水説の一種である 「液体/超臨界CO<sub>2</sub>仮説」です。
海底の熱水噴出孔の周辺には、 液体あるいは超臨界状態の 二酸化炭素(CO₂)が溜まっている 場所があることが知られています。
その液体/超臨界CO₂プールが、 生命誕生に重要な役割を 果たしたのではないかという説です。
液体/超臨界CO₂という言葉は あまり聞いたことがないのですが、 どういったものなんですか?
私たちの身のまわりにあるような通常の環境では、 CO₂は気体として存在します。
これに高い圧力をかけて マイナス60℃を下回る低温にすると、 CO₂は固体になります。
ドライアイスですね。
そこまで低温ではない環境で高い圧力をかけると、 今度は液体になるんです。
また、温度と圧力が一定以上になると、 今度は「超臨界状態」とよばれる特殊な状態になります。
![]() 図1:CO₂(二酸化炭素)の状態図
水深1000メートルをこえるような深海は、 少なくとも0℃以上の水温で 水圧は100気圧以上ありますから、
CO₂がたくさんある場合は液体もしくは 超臨界状態になって存在する環境なんです。
超臨界状態といわれても想像しづらいと思いますが、 基本的には液体のように物質を溶かし、
気体のようにものの隙間をスルスルと動き回ることができる、 そんな状態だと考えてもらってよいと思います。
とくに、深海の熱水噴出孔は、 この条件が揃いやすいため、 液体/超臨界CO₂が存在できることに気づきました。
世界でまだ数ヵ所しか見つかっていないでは液体/超臨界CO₂は、 熱水噴出孔に必ずあるものなんでしょうか?
どこの熱水噴出孔にもあるわけではなくて、 まだ世界中で数ヵ所しか見つかっていません。
日本周辺だと、 沖縄トラフやマリアナ海溝近くで見つかっています。
あとは北極圏のグリーンランド近くの 海底火山にもあると予想されています。
![]() 図2:液体/超臨界CO₂プールが 確認されたものは赤い★印で示した
まだ確認されていないだけで、 よく調べたらもっと存在すると思います。 なぜ、液体CO₂に注目するのか?深さ約3000メートルより浅い海では 液体CO₂は水よりも軽いので、
海の中では自然に海底に沈みこむことはありません。
熱水噴出孔の周辺に溜まっているといっても、 何らかのフタや傘のような構造の下に溜まっています。
![]() 図3:海底下から噴出する気泡のように見えるものが液体CO₂。 この採取地点は、 水深約1000メートルのため液体CO₂が水よりも軽く、 地中から噴出している
この画像は、 沖縄トラフで海底下に液体CO₂が溜まっていた 場所を崩してみたところです。
液体CO<sub>2</sub>がガスのようにボコボコと 噴き出している様子がわかると思います。 水と混ざらず、有機物は溶け込む液体/超臨界CO₂はなぜ海底熱水説の 弱点を解決できるのですか?
それは液体/超臨界CO₂の特殊な性質にあります。
まず、液体/超臨界CO₂は水をほとんど溶かしません。
まるで水と油のように、 水とは混ざり合わないんです。
それでいて、 さまざまな有機物や金属を溶かします。
疎水性(水に溶けにくい性質)の 有機溶媒みたいな性質を示すということです。
![]()
液体/超臨界CO₂の中は「水がない環境」なんですね!
そういうことです。
液体/超臨界CO₂が溜まっている場所があることで、 熱水噴出孔の周辺に水がある環境とない環境ができるんです。
それによって、 ウオーター・パラドックスを解決できると考えています。
水がない液体/超臨界CO₂の中で 生命の材料を作る反応が進み、
それらの材料を使って生命が誕生したあとは、 となり合う海水や熱水の中でエネルギー代謝を 行うことができます。
液体/超臨界CO₂プールと海水の境界領域は、 まさに生命誕生にうってつけの場所なんです。
液体/超臨界CO₂が溜まっているところと海水の境界では、 有機物の水に溶けやすい部分と 溶けにくい部分が同じ向きに並んで集まりやすくなります。
それは膜の形成につながったかもしれません。
また、 DNAなどの遺伝物質は水の中では不安定で どんどん分解してしまいますが、
超臨界CO₂の中では安定であることもわかっています。
これらの性質も、 生命誕生の場としては非常に便利な性質です。
水より軽いのに、なぜ海底下にあるのか?水より軽い液体/超臨界CO₂が海底下に溜まることは、 すごく難しいのではないですか?
液体CO<sub>2</sub>が冷たい海水に触れると、 反応して「CO₂ハイドレート」という特殊な氷になるんです。
CO₂が100%の氷(固体)はドライアイスですが、 CO₂ハイドレートはCO₂と水が混ざった氷です。
熱水噴出孔周辺では、 海底火山のマグマによってCO₂を多く含んだ熱水が作られて、
地下深くから上昇してくると考えられます。
上昇する過程でCO₂が分離して、 液体/超臨界CO₂ができます。
海底近くまで上がってきた液体/超臨界CO₂は、 冷たい海水と反応してCO₂ハイドレートを作ります。
すると、それがフタの役割をして、 深海/超臨界CO₂が浮き上がるのを防ぎます。
こうして、 海底下に液体/超臨界CO₂が溜まって、 プールができるのだと考えています。
![]() 図4:海底下に存在するCO₂ハイドレート。 「しんかい2000」による採取。 南西諸島第4与那国海丘 水深1383メートル
液体CO₂が海底からボコボコと噴き出している 様子の写真がありましたが、
あれははフタになっていたCO₂ハイドレートを壊したことで、 液体CO₂が出てきたものなんです。
40億年前にも存在したのか?同じようなことが、 40億年前の地球でも起きていたんですか?
はい、 熱水噴出孔と液体/超臨界CO₂プールは、 初期の地球にもあったと考えています。
実際に、 35億年前の地層から液体/超臨界CO<sub>2</sub>の痕跡と 思われるような物質が見つかっています。
西オーストラリアのノースポール地域にある 35億年前の岩石の中から、
液体CO₂を内部に含んだ鉱物が報告されているんです。
これは、 液体CO₂が初期地球でも作られていた証拠になると思います。
地層に残っていたのは35億年前のものですが、 生命が誕生した40億年以上前にも、 海底下には液体/超臨界CO₂プールが 存在しただろうと考えています。
ウォーター・パラドックスを解決できる!下の図は、 生命の起源に関する「液体/超臨界CO₂仮説」の 全体像をまとめたものです。
40億年以上前の冥王代は、 今よりも大気中のCO₂濃度が高くて、 海水に溶けていたCO₂の量も多かったと考えられています。
そんな高CO₂海水が海底下の深くまで浸透していって、 マグマに温められます。
さらに、 海底下の岩石中でCO₂を多く含んだ熱水からCO₂が分離し、 大量の液体/超臨界CO₂が作られます。
それが上昇してきて、 海底下に溜まるというストーリーです。
![]() 図5:液体/超臨界CO₂仮説
こうしてできた液体/超臨界CO₂プールで 生命の材料を作る反応が起き、
それを元に海水や熱水との境界領域で、 最初の生命が誕生した。
これで海底熱水説の長年の課題だった ウォーター・パラドックスを解決することができます。
海底熱水説の弱点はなくなったと考えてもよいでしょうか?
問題点はだいぶクリアされたと思います。 もちろんまだ実験などを行って、 検証する必要はありますが、 かなりの部分が解決できると考えています。
この説を補強するための3つの検証この仮説の検証のために、 今後何を行う予定ですか?
3つの検証計画を考えています。
1つ目は、 液体CO₂に何が溶けるかを深海探査で明らかにすることです。
実は、 液体CO<sub>2</sub>に何が溶けるかは、 まだよくわかっていない部分があります。
沖縄トラフの液体/超臨界CO₂プールから 採取してきた液体CO₂を使って、 中に溶けこんでいる成分を分析する予定です。
おそらく生物の死骸の一部が 溶けこんでいると思うのですが、
生物を構成する物質のうち、 どの成分が溶けるのかをはっきりさせる予定です。
![]() 図6:沖縄トラフの液体/超臨界CO₂プールから 液体CO₂を採取する様子
先ほど西オーストラリアの35億年前の岩石の中から、 液体CO₂の存在を示す証拠が見つかっていると話しました。
2つ目としては、 その地域のサンプルをもっとくわしく分析して、 当時の水や液体CO₂に何が溶けていたかを 明らかにしたいと考えています。
それ以外にも、 初期地球のさまざまな地質記録について、 生命の起源に関連した物質や情報を 見落としていないかどうか、
あらためて全部見直したいと思っています。
新しい視点で見直せば、 古い地層から液体CO₂があった証拠などが 新たに見つかる可能性もあります。
それは膨大な作業になりそうですね。 あと1つは何ですか?
3つ目としては、 液体CO₂が周囲の海水と反応すると何が起きるかを、 実験で詳細に明らかにしたいですね。
液体CO₂が海水と反応するとCO₂ハイドレートが できるんですが、
そのときに中に溶けていたものが 濃集するのではないかと考えています。
ほかにも、 生命の材料を作る反応に役立つような、 いろんな現象が起きるかもしれません。
深海の熱水噴出孔と、 地上にある初期地球の地質記録、 そして実験を組み合わせて、 この仮説を補強していきたいですね。
応用研究にも広がる可能性液体/超臨界CO₂に関する研究は、 生命の起源だけにとどまらない 応用可能性があるとうかがいました。
液体/超臨界CO₂は、 まだまだ性質がよくわかっていません。
生命の起源に関する研究の一環として その性質を明らかにしていけば、
ほかの分野にも波及効果があると考えています。
たとえば、金属を吸着する性質を利用して、 有害な金属を回収することに使ったりもできると思います。
あとは温室効果ガスであるCO₂を液体にして、 海底下に貯留する技術への応用なども考えられます。
応用できる分野が幅広いですね。
いろんな応用が考えられますが、 まずは生命の起源にせまりたいですね。
海底熱水説の唯一の弱点を克服できるのは、 液体/超臨界CO₂仮説しかないだろうと思っています。
実験などでどんどん証拠を積み上げていって、 強い説にしていきたいですね。
誰もやっていなかった研究なので、 研究を進める中で新しい発見が いくつもあるんじゃないかとワクワクしています。
我々のグループ以外にも、 興味を持った方がいたらぜひ参入してほしいですね。
研究者が増えれば一気に研究が進みますから。
そのためにも我々がまず頑張って、 面白い成果を出さなきゃいけないなと思っています。
<参考:渋谷岳造主任研究員>
|
|