2025/5/14

生命を誕生させたのは雷ではなく水しぶきが生み出す「マイクロライトニング」かもしれない

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

生命を誕生させたのは

雷ではなく水しぶきが生み出す

「マイクロライトニング」

かもしれない

 
 
 

 

 

 

生命科学に興味がある人なら、

原始の地球を再現した実験装置で

雷を模した放電を起こし、

 

生命の源となるアミノ酸を合成した

ユーリー-ミラーの実験」を

知っているかもしれません。

 

新しい研究により、

生命は海原への劇的な落雷ではなく、

 

波間の水しぶきで発生した小さな

「マイクロライトニング(Microlightning)」で

誕生した可能性が提唱されました。

 



有名なユーリー-ミラーの実験は

メタン、アンモニア、水素といったガスと雷によって

有機分子が生成される可能性を

示したものだと位置づけられていますが、

 

雷の発生頻度が低すぎることや、

海が広すぎて化学物質が

広範囲に拡散していることなどから、

 

このシナリオは現実的ではないとする

反対意見もあります。

 


科学誌・Science Advancesで

発表した研究で、スタンフォード大学の

化学教授であるリチャード・ザーレ氏らのチームは、

 

噴霧された微小な水滴が

空気中のガス分子の電離を引き起こす

可能性を指摘した別の研究を手がかりに、

 

これまでとは異なったアプローチを

模索する実験を行いました。

 



最初の実験で、

研究チームは音波で水滴を浮かせつつ、

 

音波の送信機と反射器の距離を

変えて水滴から小さな水しぶきを発生させ、

その振る舞いを観察しました。

 

 

 

 

 

以下の動画を再生すると、

実験の様子を見ることができます。

 

 



スタンフォード大学による水滴の「マイクロライトニング」実験の様子 - YouTube

 

 

 

小さいのでよく見えませんが、

拡大すると確かに水滴から微細な

水滴が発生しているのが見えます。

 

 

 

この実験の結果、大きな水滴がプラスの電荷を、

小さな水滴がマイナスの電荷を帯びる

傾向があることがわかったほか、

反対の電荷を帯びた2つの水滴が接近すると、

 

水滴の間で放電が起きることがわかりました。



水滴の間で発生する火花はあまりにも小さく、

人間の目には見えないため、

 

研究チームはハイスピードカメラを使って

発光を観測しなければならなかったとのこと。

 

それでも、

この現象は雷と同様に分子を励起させたり、

解離させたり、

イオン化させたりする働きを持っているため、

 

研究チームはこの現象を

「マイクロライトニング」と名付けました。

 



マイクロライトニングは、

規模は小さくても大きな

エネルギーを帯びています。

 

そこで、

研究チームは原始の地球に存在していた窒素、

メタン、二酸化炭素、アンモニアを含んだ

混合ガスの中で常温の水を噴射し、

 

水滴とマイクロライトニングを

発生させる実験を行いました。

 



その結果、

DNAとRNAの成分の1つであるウラシルや、

 

アミノ酸の一種であるグリシン、

シアン化水素など、

 

炭素と窒素の結合を持つ有機分子が

生成されたことが確かめられました。

 

 

 

 

 

この知見は、

雷がなくても波や滝で発生した小さな

スパークによって生命の構成要素が

生成される可能性を示しています。

 



ザーレ氏は「初期の地球では、

あらゆる場所で水が噴き出していました。

 

岩の割れ目や岩肌に水がぶつかり、

それが繰り返されて化学反応を起こした

可能性があります。

 

この仮説は、放電による化学反応で

生命が誕生したとする

『ミラー・ユーリー仮説』に対して

 

指摘されている多くの問題点を克服すると、

私は考えています」 と述べました。