2025/3/28

量子コンピューターで人工光合成や次世代電池開発も可能。世界的物理学者が具体的に予想

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

量子コンピューターで

人工光合成や次世代電池開発も可能。

世界的物理学者が具体的に予想

 
 
 
 
 
 

量子コンピューターで世界はどう変わるのか?

 
 

量子コンピューターの研究・開発が

世界的に進展する中、米中のビッグテックに加え、

 

日本も存在感を示している。

 

NTTは光量子コンピューター

富士通は超伝導方式や量子インスパイアード技術に注力。

 

QunaSysやblueqatといったスタートアップも台頭する。

 

理化学研究所をはじめ、

東京大学大阪大学などの学術機関も加わり、

 

多彩なプレーヤーが連携しながら研究を進めている。

 

 

関連ニュースも増えているが、

量子の話は専門的かつ難解だ。

 

正直、ついていけないという方はいないだろうか?

 私自身「物理コンプレックス」があるのだが、

これだけニュースが増えてくると

「わからない」とばかりはいっていられない。

 

量子コンピューターの何がそんなにすごいのか、

何ができ、

未来はどう変わるのか、

具体的なことを押さえておきたい。

 

 

そこで役立つのが『量子超越』(NHK出版)。

 

素粒子を「ひも」として捉える

「ひもの場の理論」の創始者の一人であり、

 

量子論研究でも知られる世界的物理学者の

ミチオ・カク博士によるベストセラーだ。

 

量子コンピューターの仕組みを解説するとともに、

それが実現する可能性がある、

さまざまな技術や事象を紹介する。

 

 

人工光合成

肥料を作る技術の改善など社会課題解決、

創薬や遺伝子編集など医療分野への活用、

さらに「世界と宇宙のモデル化」といった観点まで幅広い。

 

 

なおカク博士は、

一般読者向けに最新の科学の知見を

わかりやすく伝えることで定評のある人物だ。

 

この本も、

多少専門的でわかりにくい部分があっても、

全体としてはとても面白く読み進められる。

 

「人工光合成」の実現や

気候変動問題の解決も

 
 

量子力学の世界における「量子」は、

物理量の最小の単位と定義されている。

 

量子コンピューターは、

量子力学の原理を使って計算を行うコンピューター。

 

通常のデジタル式コンピューターは、

「0」か「1」のビットで情報を処理するが、

 

量子コンピューターは「0」と「1」の両方の状態を

同時に持つ量子ビットを使って計算を行う。

 

 

わかりやすくたとえれば、

3枚のコインがそれぞれ表か裏かを調べる際、

 

デジタル式コンピューターでは、

2の3乗で8通りを調べる必要がある。

 

一方、量子コンピューターでは、

3枚のコインが同時に全8通りの

組み合わせを持つ状態をつくり、

 

一気に計算して特定の答えを探すことができる。

 

 

その性能と可能性は、

まさにケタ違いだ。

 

例えばグーグルが開発した

「シカモア」という量子コンピューターは、

 

世界最速のデジタル式のスーパーコンピューター

1万年かかるような数学的問題を200秒で解けるという。

 

カク博士は、

量子コンピューターは「従来のコンピューターの

高速化」ではなく、

 

これまで「どれだけ時間をかけても

解けなかった問題に取り組める」ものだとする。

 

 

これまで解けなかった謎、

例えば地球に生命が誕生した

「量子論的なプロセス」がわかるかもしれない。

 

いまだに人工的に再現できない植物の

「光合成」のプロセスも再現できる可能性が見えてくる。

 

実現すれば、

効率的な新型太陽光電池の開発や、

CO2のリサイクルによる

気候変動対策に役立てられる。

 

 

さらにいえば、

気候変動問題は経済的、社会的、政治的な

世界の「分断」を広げる要因の一つだ。

 

量子コンピューターは、

間接的に世界の対立・分断を

緩和するのかもしれないのだ。

 
 

「がん」の危険性は「風邪」レベルになる

 
 

量子コンピューターが産業界に与えるインパクトは、

電池開発の例がわかりやすいかもしれない。

 

近年、EV(電気自動車)の普及に伴って

リチウムイオン電池の性能向上、

 

あるいはまったく新しい高性能な

次世代電池の開発競争が起きている。

 

 

カギを握るのは、

最適な電池の素材の組み合わせだ。

 

 

この組み合わせをAIやビッグデータを

使って探す「マテリアル・インフォマティクス」が

注目されている一方、

 

 

デジタル式のスーパーコンピューターを用いても

データの解析は数年かかる場合があるのが

現状だ。

 

これに量子コンピューターを使うことで、

開発スピードが飛躍的に加速すると考えられる。

 

 

医療界に与えるインパクトも大きい。

 

例えば「がん」は風邪のようなものになるかもしれない。

 

がんが成長して腫瘍になる前、

まだ細胞が数百個しかない段階で検知することで、

進行をくい止め、

リスクを抑えられるからだ。

 

 

実現には、

尿からごく初期のがんを突き止める

「リキッドバイオプシー」を備えた

スマートトイレと量子コンピューターを組み合わせる。

 

用を足すたびに尿を検査するのだが、

がんを引き起こす変異は何万種類とある。

 

したがって、

この解析は量子コンピューターを用いることで

初めて可能になるのだ。

 

 

医療分野ではほかにも、

筋萎縮性側索硬化症(ALS)や

パーキンソン病の治療、

 

不老不死の実現などにも言及される。

 

 

気候変動や食糧危機、エネルギー危機など、

地球が直面する数々の難題は、

量子コンピューターによって解決の

道筋が見えてくる。

 

 

さらには、

人類以外の知的生命の探索など、

描かれる可能性は色とりどりでわくわくする。

 

世界情勢や地球環境をめぐって

暗いニュースが多い昨今、

本書は、前向きな未来を信じさせてくれる。

 

 

 

 
 
 
『量子超越』
 ミチオ・カク 著
 斉藤 隆央 訳

 

 

<参考:斉藤 隆央 訳>