日本列島は、
言わずと知れた火山列島である。
どこの火山の噴火警戒レベルが
上がったというニュースを耳にする機会も多い。
しかし、私たちの住む土地に、
なぜ火山がたくさんあるのかを
説明できる人は多くはいないだろう。
なぜ火山ができるのか。
そんなシンプルな質問に答えてくれたのは、
前の記事で大陸と海洋の地殻の特徴と、
その違いについてわかりやすく解説してくれた
岩石学者の田村芳彦氏
(国立研究開発邦人海洋研究開発機構 上席研究員)である。
そしてプレートの成り立ちから、
火山のでき方まで、田村氏に説明頂いた。
地殻、マントルと、
プレートとは分類の方法が違う
地震関連のニュースで、
「プレート」という言葉をよく耳にします。
プレートは、地殻と同じものなのでしょうか。
田村芳彦氏(以下、田村):プレートは、
地球表面を覆っている硬い岩盤のことを言います。
地殻とマントルの最上部の総称です。
地殻とマントルは構成する物質(岩石)の
化学組成で区別されます。
一方、プレートは力学的な性質に基づいた分類です。
力学的性質とは、
簡単に言えば「硬いか」「やわらかいか」ということです。
マントルの最上部は非常に硬いため、
力学的に下部のマントルと分けて考える必要があるのです。
なぜ、マントルの最上部に硬い部分が
存在しているのですか。
田村:硬いかやわらかいかを決めるのは、
温度です。
地球深部にあるマントルほど高温ですので、
やわらかくなります。
一方、
地殻に近いところにあるマントルは、
温度が低いために硬くなるのが一般的です。
中央海嶺で作られ続けるプレート…
なくなる場所は
インタビュー冒頭で海洋プレートは
中央海嶺でつくられる、
という話がありました。
プレートがつくり続けられているのであれば、
それがなくなる場所がなくてはならない、
と思います。
田村:先ほど説明したように、
プレート同士は衝突します。
比較的重たい(密度が大きい)海洋プレートは、
軽い大陸プレートの下に沈み込みますし、
海洋プレート同士の衝突では、
より古く冷やされたほうのプレートが沈み込みます。
この地点を沈み込み帯といいます。
大陸プレート同士が衝突した場合は、
ヒマラヤのように大山脈を形成します。
ここでは、
「プレートは海洋の中央海嶺で生まれ、
沈み込み帯でなくなる」と憶えておいてください。
沈み込み帯の下は、
どのようになっているのですか。
田村:沈み込み帯の断面図をお示しします。
これは、沈み込むプレートの
運動方向と平行な面で切った断面です。
沈み込まれる側(上盤)のプレートのマントルは、
くさび状の形状になっています。
そのため、
この領域は「マントルウェッジ」と呼ばれています。

一方、沈み込む側のプレートの、
既に沈み込んだ部分は「スラブ」といいます。
スラブが沈み込んで、
その上にマントルウェッジがあり、
地殻がある、という構造です。
マントルウエッジの下部も、
スラブと一緒に引きずり込まれます。
なぜ日本列島には火山が多いのか
上盤プレートのマントルも一緒に
引きずり込まれているとは、意外でした。
書籍中では、
沈み込み帯と日本の火山の
関係性について説明していました。
田村:なぜ日本にたくさんの火山があるのかと言うと、
日本近海からプレートが沈み込んでいるからです。
日本海溝がその代表例でしょう。
日本はまさに沈み込み帯に位置しています。
なぜプレートが沈み込むと火山ができるのか。
海洋プレートは、
常に海水と接しています。
沈み込みがはじまる海溝の手前で、
海洋プレートには下向きに折り曲げるような力が働くため、
正断層ができます。
正断層を伝って海水がプレートに染み込んでいくため、
プレートは海水を多く含んだ状態で
沈み込んでいくことになります。
沈み込むプレート(スラブ)は、
地下深くに達すると高い圧力と温度に晒されます。
すると、
スラブに染み込んでいた水が絞り出されて、
マントルウェッジに到達します。
水が入ったマントルは、
融点が数100℃ほど下がります。
加えて、
マントルウェッジの中央部は、
対流によって温度が高いという特徴があります。
この対流は、
マントルウェッジの下部がスラブに
引きずり込まれる(下降流が生じる)ために起こります。
中央部では上昇流が生じ、
深部の熱いマントル物質が持ち上げられているのです。
温度の高いマントルに水が入ってくると、
マントルは更に溶けやすくなります。
つまり、
プレートの沈み込みに伴い、
マントルウェッジ中では融解が起こり、
マグマが生成するのです。
マントルウェッジでつくられたマグマが地表に噴出して、
上盤プレート上に火山ができるのです。
列島近海に沈み込み帯が存在しているため、
日本列島は火山列島となっている、
ということですね。
田村:そうです。
海溝とほぼ平行に火山列が形成されます。
これを「火山フロント」と呼びます。
ただ、火山フロントに隙間なく火山が存在している、
というわけではありません。
例えば日本では、
北海道から東北、関東北部にかけて、
10個の火山グループが点在しています。
これは太平洋プレートが北米プレートに
沈み込む方向に平行する火山列です。
火山グループがある地点は、
日本海溝から200~300km程度離れた地点です。
ここが、
プレートが沈み込んで水が絞り出されて,
その水によって融解するマントルウェッジの
上部に相当すると考えられます。
けれども、
東日本に点在するこの火山グループの間に、
火山のない隙間があります。
さらに、
よく見ると火山グループを構成する
火山は東西に分布していることがわかります。
つまり、
東日本では「東西に火山が分布している火山グループ」が、
一定の間隔を置いて南北に並んでいる、と考えることができます。
東日本以外にも、
北米のカスケードやアリューシャンでも、
同様の火山の配列を見ることができます。
火山のない隙間が存在するわけ
なぜ、
火山フロントは隙間だらけなのですか。
田村:従来、
プレートの沈み込みの反流として
マントルウェッジにはいってくるマントルは
板状に上昇するものだと考えられていました。
しかし、そうだとすると、
火山フロントにはびっちりと火山が並んでいるはずです。
火山フロントが隙間だらけである現実と合いません。
つまり、
マントルの上昇する場所にはばらつきがある、
ということです。
私たちは、
マントルが板状ではなく、
手の指のように凹凸の形状で
上昇してくるのではないか、と考え、
これを「ホットフィンガー仮説」として発表しました。

東日本で言うと、
マントルは約10カ所で上昇し、
その1個1個がホットフィンガーであり、
それぞれの指の上に、火山が形成されている、
と考えることができます。
マントルウェッジの中を
高温のマントルが斜めに上昇していく、
そのマントルが沈み込むプレートから
水を供給される、
ということですね。
なぜ、マントルウェッジ内でマントルが
上昇しやすい場所とそうでない
場所があるのでしょうか。
田村:その点は、まだよくわかっていません。
ただ、
マントルウェッジ内でマントルが上昇しやすい
場所があるというと、
マントルウェッジ内の特性が
不均一であるかのような
誤解を招いてしまうかもしれません。
マントルウェッジ自体は、
均一の特性であると考えたほうが良いと思います。
マントルウェッジの中で小さい対流がたくさん
発生しており、
それにより板状ではなく指状に
分かれてマントルが上昇しているのではないか、
と現段階では考えています。
<参考:>