2025/2/16

この狭い日本列島に「これだけの火山が乱立」する謎…じつは、列島の下の「マントルの手」から「指」が伸びている

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

この狭い日本列島に

「これだけの火山が乱立」する謎…

じつは、

列島の下の「マントルの手」から

「指」が伸びている

 
 

田村 芳彦

 

日本列島は、

言わずと知れた火山列島である。

 

どこの火山の噴火警戒レベルが

上がったというニュースを耳にする機会も多い。

 

しかし、私たちの住む土地に、

なぜ火山がたくさんあるのかを

説明できる人は多くはいないだろう。

 

 

なぜ火山ができるのか。

 

 

そんなシンプルな質問に答えてくれたのは、

前の記事で大陸と海洋の地殻の特徴と、

その違いについてわかりやすく解説してくれた

岩石学者の田村芳彦氏

(国立研究開発邦人海洋研究開発機構 上席研究員)である。

そしてプレートの成り立ちから、

火山のでき方まで、田村氏に説明頂いた。

 

 

 

【書影】大陸の誕生

 

地殻、マントルと、

プレートとは分類の方法が違う

 
 

地震関連のニュースで、

「プレート」という言葉をよく耳にします。

プレートは、地殻と同じものなのでしょうか。

 

 

田村芳彦氏(以下、田村):プレートは、

地球表面を覆っている硬い岩盤のことを言います。

地殻とマントルの最上部の総称です。

 

 

地殻とマントルは構成する物質(岩石)の

化学組成で区別されます。

 

一方、プレートは力学的な性質に基づいた分類です。

力学的性質とは、

簡単に言えば「硬いか」「やわらかいか」ということです。

 

 

マントルの最上部は非常に硬いため、

力学的に下部のマントルと分けて考える必要があるのです。

 

 

なぜ、マントルの最上部に硬い部分が

存在しているのですか。

 

 

田村:硬いかやわらかいかを決めるのは、

温度です。

 

地球深部にあるマントルほど高温ですので、

やわらかくなります。

 

 

一方、

地殻に近いところにあるマントルは、

温度が低いために硬くなるのが一般的です。

 

 

中央海嶺で作られ続けるプレート…

なくなる場所は

 
 

インタビュー冒頭で海洋プレートは

中央海嶺でつくられる、

という話がありました。

 

レートがつくり続けられているのであれば、

それがなくなる場所がなくてはならない、

と思います。

 

 

田村:先ほど説明したように、

プレート同士は衝突します。

 

比較的重たい(密度が大きい)海洋プレートは、

軽い大陸プレートの下に沈み込みますし、

海洋プレート同士の衝突では、

より古く冷やされたほうのプレートが沈み込みます。

 

この地点を沈み込み帯といいます。

 

 

大陸プレート同士が衝突した場合は、

ヒマラヤのように大山脈を形成します。

 

 

ここでは、

「プレートは海洋の中央海嶺で生まれ、

沈み込み帯でなくなる」と憶えておいてください。

 

 

沈み込み帯の下は、

どのようになっているのですか。

 

 

田村:沈み込み帯の断面図をお示しします。

これは、沈み込むプレートの

運動方向と平行な面で切った断面です。

 

 

沈み込まれる側(上盤)のプレートのマントルは、

くさび状の形状になっています。

 

そのため、

この領域は「マントルウェッジ」と呼ばれています。

 

 

 

 
沈み込み帯の断面図

 

 

一方、沈み込む側のプレートの、

既に沈み込んだ部分は「スラブ」といいます。

 

スラブが沈み込んで、

その上にマントルウェッジがあり、

地殻がある、という構造です。

 

 

マントルウエッジの下部も、

スラブと一緒に引きずり込まれます。

 

 

なぜ日本列島には火山が多いのか

 
 

上盤プレートのマントルも一緒に

引きずり込まれているとは、意外でした。

 

書籍中では、

沈み込み帯と日本の火山の

関係性について説明していました。

 

 

田村:なぜ日本にたくさんの火山があるのかと言うと、

日本近海からプレートが沈み込んでいるからです。

 

日本海溝がその代表例でしょう。

日本はまさに沈み込み帯に位置しています。

 

なぜプレートが沈み込むと火山ができるのか。

 

海洋プレートは、

常に海水と接しています。

沈み込みがはじまる海溝の手前で、

海洋プレートには下向きに折り曲げるような力が働くため、

正断層ができます。

 

正断層を伝って海水がプレートに染み込んでいくため、

プレートは海水を多く含んだ状態で

沈み込んでいくことになります。

 

 

沈み込むプレート(スラブ)は、

地下深くに達すると高い圧力と温度に晒されます。

 

すると、

スラブに染み込んでいた水が絞り出されて、

マントルウェッジに到達します。

 

 

水が入ったマントルは、

融点が数100℃ほど下がります。

 

加えて、

マントルウェッジの中央部は、

対流によって温度が高いという特徴があります。

 

この対流は、

マントルウェッジの下部がスラブに

引きずり込まれる(下降流が生じる)ために起こります。

 

中央部では上昇流が生じ、

深部の熱いマントル物質が持ち上げられているのです。

 

温度の高いマントルに水が入ってくると、

マントルは更に溶けやすくなります。

 

 

つまり、

プレートの沈み込みに伴い、

マントルウェッジ中では融解が起こり、

マグマが生成するのです。

 

マントルウェッジでつくられたマグマが地表に噴出して、

上盤プレート上に火山ができるのです。

 

列島近海に沈み込み帯が存在しているため、

日本列島は火山列島となっている、

ということですね。

 

 

田村:そうです。

 

海溝とほぼ平行に火山列が形成されます。

これを「火山フロント」と呼びます。

 

 

ただ、火山フロントに隙間なく火山が存在している、

というわけではありません。

 

例えば日本では、

北海道から東北、関東北部にかけて、

10個の火山グループが点在しています。

 

これは太平洋プレートが北米プレートに

沈み込む方向に平行する火山列です。

 

 

火山グループがある地点は、

日本海溝から200~300km程度離れた地点です。

 

ここが、

プレートが沈み込んで水が絞り出されて,

その水によって融解するマントルウェッジの

上部に相当すると考えられます。

 

 

けれども、

東日本に点在するこの火山グループの間に、

火山のない隙間があります。

 

さらに、

よく見ると火山グループを構成する

火山は東西に分布していることがわかります。

 

 

つまり、

東日本では「東西に火山が分布している火山グループ」が、

一定の間隔を置いて南北に並んでいる、と考えることができます。

 

 

東日本以外にも、

北米のカスケードやアリューシャンでも、

同様の火山の配列を見ることができます。

 

 

 

火山のない隙間が存在するわけ

 
 

なぜ、

火山フロントは隙間だらけなのですか。

 

 

田村:従来、

プレートの沈み込みの反流として

マントルウェッジにはいってくるマントルは

板状に上昇するものだと考えられていました。

 

しかし、そうだとすると、

火山フロントにはびっちりと火山が並んでいるはずです。

火山フロントが隙間だらけである現実と合いません。

 

 

つまり、

マントルの上昇する場所にはばらつきがある、

ということです。

 

私たちは、

マントルが板状ではなく、

手の指のように凹凸の形状で

上昇してくるのではないか、と考え、

 

これを「ホットフィンガー仮説」として発表しました。

 

【図】ホットフィンガー仮説
 
ホットフィンガー仮説

東日本で言うと、

マントルは約10カ所で上昇し、

その1個1個がホットフィンガーであり、

それぞれの指の上に、火山が形成されている、

と考えることができます。

 

 

マントルウェッジの中を

温のマントルが斜めに上昇していく、

 

そのマントルが沈み込むプレートから

水を供給される、

 

ということですね。

 

なぜ、マントルウェッジ内でマントルが

上昇しやすい場所とそうでない

場所があるのでしょうか。

 

 

田村:その点は、まだよくわかっていません。

 

 

ただ、

マントルウェッジ内でマントルが上昇しやすい

場所があるというと、

マントルウェッジ内の特性が

不均一であるかのような

誤解を招いてしまうかもしれません。

 

マントルウェッジ自体は、

均一の特性であると考えたほうが良いと思います。

 

 

マントルウェッジの中で小さい対流がたくさん

発生しており、

 

それにより板状ではなく指状に

分かれてマントルが上昇しているのではないか、

と現段階では考えています。

 

 

<参考:>