2024/12/20

この地球は、水の惑星…水が「生命の母」と言われる納得の理由。なんと、海の成分は「生物そっくり」

 
 
 
 
 
 
 
 
 

この地球は、水の惑星…

水が「生命の母」と言われる

納得の理由。

なんと、

海の成分は「生物そっくり」

 
 

地球という惑星の進化は、

水のはたらきを抜きにしては

語ることができません。

 

 

じつは、水は地球の表層だけではなく、

プレートテクトニクスと共に、

 

地球の内部に取り込まれ、

地質学的なスケールで大循環しています。

 

しかも、

今後6億年で、

海の水はすべて地球内部に吸収され、

海は消失してしまうという、

驚きの最新研究もあります。

 

 

「水」を地球規模のスケールで解説した

水の惑星「地球」

46億年の大循環から地球をみるから、

 

興味深いトピックをご紹介していくシリーズ。

 

地球の歴史を振り返りながら、

「水」が地球の環境のなかで、

どのような働きをしているのかを見ていきます。

 

 

「生命の母」とも呼ばれる地球の水。

 

今回は、生命にとっての水の役割から、

海と生命の化学的成分を検証し、

 

その類似性を生命誕生まで

さかのぼって見ていきます。

 

 

 

【書影】水の惑星「地球」
 
 
 
 
 
生命にとっての水の役割
 
 

これら生命として不可欠な要素のいずれにも、

「水」はなくてはならない存在です。

 

生きた細胞には多くの水分が含まれますし、

私たち人間もほぼ60%以上は水からできています。

 

では、

生命はなぜそんなにも多くの水を

必要とするのでしょうか。

 

そこには水特有の性質が関わっています。

 

水はいろいろな物質を溶かし込む性質があります。

 

地球上のほとんどすべての元素は、

量はともかくとして水に溶け込むことができます。

 

もちろん塩や二酸化炭素は

水に大量に溶け込みます。

 

 

細胞の外と内では物質のやり取りが必要となり、

そのような物質は水に溶けた状態で移動します。

 

血液はそのほとんどが水からできていて、

溶け込んだ酸素や栄養を

体の隅々まで運んでくれます。

 

 

また、

老廃物は尿によって体の外に出すことができます。

 

植物では、

根から地中の水を吸い上げると同時に、

土壌に溶け込んでいる様々な元素を

水と一緒に吸収するからこそ成長できます。

 

つまり生命は、

溶かして運搬するという水の特殊な

能力を利用しているのです。

 

 

また、代謝を含めた化学反応は、

多くの場合、水のなかで進行します。

 

 

例えば、

糖やタンパク質は水が加わる反応によって

分解(加水分解)されますし、

 

DNAなどの核酸の合成・分解にも、

必ず水分子が関わっています。

 

 

多くの物質を溶かすことのできる水のなかでこそ、

生命に必要な代謝や複製が活発に起きているのです。

 

 

もう一つ水の特殊な能力を挙げるとすれば、

熱容量の大きさです。

 

熱容量は、

ある物体の温度を単位温度上げるのに

必要なエネルギーです。

 

それが大きいということは

「温まりにくく冷めにくい」ということです。

 

 

生命が水からなるということは、

環境の温度変化に左右されにくく、

 

生命機能を維持するために必要な微妙な

温度調整ができるというわけです。

 

 

地球は海に覆われていることで、

大気の温度変化を緩和する働きをしています。

 

海が温度を保ってくれるおかげで、

気候が安定化し、

 

生命にとって居心地のいい

環境が維持されているのです。

 

 

 

【写真】地球は海に覆われていることで、生命にとって居心地のいい環境が維持されている
 
地球は海に覆われていることで、
 
生命にとって居心地のいい環境が維持されている 
 
 

 

 

惑星の表層環境に水が存在できる領域を

ハビタブルゾーンといい、

 

地球は、

現在の太陽系では唯一のハビタブルな惑星です。

 

海のない火星では、

地表は熱しやすく冷めやすいため、

昼夜の温度差は赤道付近で100℃ほどに達します。

 

 

それは生命にとってあまりにも

過酷な環境といえます。

 

 

生命の成分は海と似ている

 
 

微生物から人間に至るまで、

生命活動を維持するのに

必要不可欠な元素として水素(H)、

炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、

リン(P)の6つが挙げられます。

 

 

炭素と水素は有機化合物の基本構造をなし、

酸素や窒素などが加わることで

様々な官能基として働きます。

 

 

 

リンは遺伝子のもととなるDNAやRNAの

生成に必要な元素ですし、

 

硫黄は代謝プロセスで重要な役割を担っています。

 

いずれの元素も欠乏すると、

様々なトラブルが生じて、

生命活動を維持するのが困難になってしまいます。

 

 

これらの元素の多くは、

地球や宇宙空間に普遍的に

存在するものを活用しています。

(表「主要な原子組成(原子数の多い順)」)。

 

 

私たち生命は特別なものからできているのではなく、

宇宙にありふれた元素をもとにしているのです。

 

とくに、

生命と海水の元素組成は

たいへんよく似ていることから、

 

生命は海の成分をもとに

誕生したと考えられています。

 

 

リンについては現在の海水にあまり含まれていません。

 

しかし、

太古の海の成分は現在のものとは違う

可能性があります。

 

 

生命が誕生した頃の原始の地球は

厚い二酸化炭素の大気に覆われ、

 

 

酸性であったと考えられています。

 

 

その場合、

鉱物からリンが選択的に溶脱することで、

 

海水中のリン濃度が高くなり、

そのような海水を利用する

生命が誕生したと考えられるのです。

 

 

 

【イラスト】太古の海で、リンが生成された可能性を考える
 
現在の海水に、リンはあまり含まれていないが、
 
鉱物からリンが選択的に溶脱したと考えることができる 
 

 

 

生命体生息の可能性を秘めた、

土星の衛星「エンセラダス」

 
 

土星の衛星であるエンセラダスでは、

地上から噴き出すプリュームに

海水の成分が含まれています。

 

 

その海水には、

高濃度のリンが含まれていることが報告されています。

 

エンセラダスの内部海でリンの濃集がみられるのは、

炭素濃度の高い海水が岩石と

反応することによるものらしいのです。

 

 

そのような環境は

原始地球にもあった可能性がありますし、

 

現在のエンセラダスでは原始地球と同じような

生命体が生息していることも大いにありえそうです。

 

今後の更なる観測結果が楽しみです。

 

 

私たち人間の体液には、

少なくない量の塩分(NaClやKCl)が含まれていて、

 

それは海水の特徴ともよく似ています

(表「主要な原子組成(原子数の多い順)」)。

 

細胞中の塩分は0.9%ほどで、

細胞膜を通して薄い方から濃い方へ移動しています。

 

 

 

【表】主要な原子組成
 
主要な原子組成(原子数の多い順) 
 
小林憲正『宇宙からみた生命史』
 
 
 
 
 
細胞が縮んでしまいますし、
 
 
逆だと膨れてしまいます。
 
 
 
運動して汗をかくと塩分が外に出ていきますが、
 
その時に水だけではなく塩分をとらないといけないのは、
 
体の中の塩分濃度を調整するためです。
 
 
また、海水の塩分は3.4%ほどであるため、
 
海水を飲み過ぎると、
 
細胞が縮んでしまうのでとても危険です。
 
 
 

海水中の塩の起源は、

原始の地球にさかのぼります。

 

もともと酸性であった海水は、

 

岩石からナトリウムやカリウムをたくさん溶かし出し、

 

海水の塩素で中和することで

多くの塩を含むようになったと考えられています。

 

 

生命誕生の夜明け前

 
 

生命の素材となる有機分子は、

主に炭素、水素や窒素など

原始の地球や海洋にありふれた

元素からなります。

 

 

しかし、

これらの元素が重合して有機分子をつくって

高分子となり、

 

さらに組織化して生命の誕生に行き着くのは

そう簡単ではありません。

 

 

ルイ・パスツールは

「白鳥の首フラスコ」の有名な実験で、

 

生命は自然発生しないことを証明しています。

 

では、

いったい私たち生命やそのもととなる

有機物はどうやってできたのでしょうか。

 

 

生命の材料だけあっても化学進化は起きない、

もしくは進むとしても気の遠くなるような

時間が必要になると考えられていましたが、

 

スタンレー・ミラーはあっと驚く実験で

アミノ酸などの有機分子の合成に成功しました。

 

 

ミラーの実験が導き出した明暗

 
 
 

アンモニアやメタンに水を加えた

フラスコの中で火花放電すると、

 

グリシン、アラニン、アスパラギン酸などの

アミノ酸ができていたのです。

 

実験はガラス製のフラスコを用いた簡単なものでした。

 

原始の大気を模擬し、

途中で雷を想定した放電を起こすことで、

 

いとも簡単に生命の

起源物質をつくってしまったのです

(図「ミラーの実験」)。

 

ミラーはこの時まだ23歳の大学院生でした。

 

 

その後、

物質をいろいろ変えたり、

火花放電の代わりに紫外線やX線を用いるなど、

 

たくさんの実験が行われました。

 

 

そのなかで分かったことは、

メタンやアンモニアなどがある還元的な大気では

アミノ酸ができるのに対し、

 

二酸化炭素などを含む酸化的な大気のなかでは

アミノ酸は生成されなかったのです。

 

 

 

【図】ミラーの実験
 
ミラーの実験 

 

 

地球初期の大気は、

マグマオーシャンからの脱ガスで

二酸化炭素や水蒸気を大量に含み、

酸化的なものであったと想定されています。

 

 

そのため、

原始大気中の雷放電では

有機分子はできないことになり、

 

化学進化モデルはスタート地点に戻ってしまいました。

 

しかし、

原始大気の推定にはまだ不確かなところもあり、

 

一酸化炭素やメタンなどが

含まれていた可能性もあるなど、

現在も検証が続けられています。

 

 

宇宙からの隕石や小天体に、

アミノ酸の起源を求める

 
 

一方で、

地球形成初期には多くの隕石や小天体が

地球に衝突していたことから、

 

そのような衝突イベントがきっかけで、

有機分子ができたと考える研究者もいます。

 

実験室でのガス銃を使った衝突実験では、

隕石を高速で二酸化炭素を含む

大気に衝突させるとアミノ酸ができるというのです。

 

 

 

【写真】隕石や小天体の地球への衝突で、有機分子ができたと考える研究者もいる
 
隕石や小天体の地球への衝突で、
 
有機分子ができたと考える研究者もいる 
 
 

 

 

宇宙空間でも、

星間物質である氷に宇宙線が

ぶつかることでアミノ酸が生成され、

 

「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星「リュウグウ」の

試料からもアミノ酸が多数みつかっています。

 

 

宇宙を起源とした有機分子が

あるのは間違いないようですが、

 

 

量の問題や、

そこからどうやって重合し、

高次元の有機物を形成していくかなど、

まだまだ低くない壁が残っています。

 

  

<参考:片山 郁夫