もしみなさんがよかれと思って
頑張って行っている腸活が、
じつは逆効果だとしたらどうしますか?
せっかく腸活を行うのであれば、
自分が持っている腸内細菌叢や体質に合った方法で、
効率的に結果を出したいですよね。
そこで今回も前回に引き続き、
腸の専門医である江田 証先生に、
正しい腸活について教えていただきます。
教えてくれるのは……
よくある間違い⑤
“「腸もれ」って腸に穴があくことじゃないの?”
健康・美容意識の高い方であれば、
「腸もれ」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
近年注目されている「腸もれ」は、
「リーキーガット」とも呼ばれています。
リーキーとは英語で「もれやすい」
という意味で、ガットは「腸」を指します。
ひと昔前は周知されていない概念でしたが、
最近の医学界では、この「リーキーガット」
(医学的に正確には
「腸管粘膜の透過性(とうかせい)の
亢進(こうしん)」といいます)が
注目を浴びており、
トップジャーナル
(世界最高峰の専門誌)にも「リーキーガット」
(Leaky Gut)というワードが頻回に
掲載されるようになりました。
よく、「ストレスで胃に穴があきそう」という
表現を使うこともあり、
腸もれと聞くと「腸にストレスで穴があく」という
イメージを持たれる方もいるようです。
ただ実際の腸もれは、
これとは少し違います。またストレスだけでなく、
食を中心とした生活習慣が原因で
起こることもある、じつに身近な現象です。
腸もれと呼ばれる状態がどのようなものか、
簡単にご説明しましょう。
腸の粘膜は、細菌や未消化のたんぱく質が
腸から血液の中に侵入してこないように
「バリア機能」を持っています。
それが「粘液」と「タイトジャンクション」です。
腸の表面にはネバネバの「粘液」があって、
これが壁となり、
さまざまなダメージにより腸が傷つくのを
守ってくれています。
また、
腸の細胞が健康だと、
「タイトジャンクション」が細胞同士をしっかり密着させ、
外敵が侵入してこないようにブロックしていますが、
腸の粘液が減り、
腸の細胞が傷つくと、
細胞同士のつながりも壊され、スカスカの状態になります。
こうなると、
その隙間から「悪玉菌」などが作り出す
毒素(LPSなど)が少しずつ血液中に漏れ出し、
全身を巡ります(毒素血症)。
これが「腸もれ」の状態です。
毒素はわずかな量ですから、
熱が出るなどわかりやすい症状は出ませんが、
長期間さらされ続けると、
全身に慢性的な炎症を起こします
(医学的にはLow-grade inflammationと呼びます)。
自覚症状がなくても動脈硬化、肥満、糖尿病、
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、慢性腎不全、
うつ病など、
体の老化や不調を引き起こすことがわかってきました。
また、慢性的に疲労を感じる方の中には、
腸もれが原因の方もいます。
つまり腸もれは、健康や美容に大きな影響を与えます。
腸のバリア機能が落ちるわけですから、
免疫力にも影響します。
何もしなければ、
腸の粘液は加齢とともに減っていくので、
40~50代の方はぜひこのことを
意識していただきたいと思います。
では、腸もれを防ぐために、
どんなことに注意すべきでしょうか?
まず「果糖」の摂りすぎは、
リーキーガットを生じる原因の代表です。
「果糖ブドウ糖液糖」を含んだ甘い
ソフトドリンクの飲みすぎには要注意です。
また腸のバリア機能を高めるために、
「善玉菌」の中でも前回の記事に出てきた
「酪酸菌」を育てる、豆類、穀類、果物、
野菜(特に根菜)、海藻類と、
「アッカーマンシア・ムシニフィラ」という
「善玉菌」を育てるブドウやクランベリーなどのベリー類、
そしてリンゴや緑茶を積極的に摂りましょう。
なぜ「酪酸菌」や「アッカーマンシア・ムシニフィラ」
という腸内細菌を増やすと
腸のバリア機能が高まるのかご説明します。
まず、酪酸菌を育てるメリットは、
酪酸菌が作る「酪酸」という成分が、
腸の粘膜の細胞のエネルギー源になり、
腸に粘液を分泌させる機能があることです。
また、アッカーマンシア・ムシニフィラを育てるメリットは、
この菌に、薄くなって傷ついた腸粘膜の
細胞と細胞の隙間(タイトジャンクション)を密着・結合させ、
腸のもれやすさを防ぎ、
腸がスカスカになるのを改善してくれる
作用があることです(しかも、
酪酸菌と同じように腸の粘液を増やすことにも寄与します)。
前回、私は1日5皿(350g以上)の野菜と
200gの果物を摂りましょうとお伝えしましたが、
この中に上記の食材を少しずつ
取り入れていただくのがいいと思います。
“腸活のために毎日
「映えサラダ」を作っています”
野菜を積極的に食べることはいいことです。
ただ、日本人には、
日本人の腸に適した食事というものもあるので、
ぜひ覚えておいていただきたいと思います。
それが、「日本食」と「地中海食」です。
「日本食らしさ」を表す指標に、
「日本食インデックス」というものがあります。
これは、
① 米 ② みそ汁 ③ 海藻 ④ 漬け物
⑤ 緑黄色野菜 ⑥ 魚介類 ⑦ 緑茶
上記を食べるとプラス1ポイントとし、
逆に、
⑧ 豚肉・牛肉
を食べるとマイナス1ポイントとして換算し、
点数が高いほど「日本食らしい」とするものです。
この日本食インデックスが高い食事をしている人には
認知症が少ないことがわかっています。
これを見るとお分かりの通り、
先ほどお伝えした2つの「善玉菌」を育てる
食事がそのまま当てはまります。
実際、日本食インデックスの高い食事を
している人の腸内には、
酪酸菌という「善玉菌」が多いことがわかりました。
世界の食文化は、腸内細菌と密接に関連しています。
たとえばパプアニューギニアの高地人は、
年に2回ほど、お祭りの時にしか肉を食べず、
毎日ほとんどサツマイモだけで暮らしています。
にもかかわらず、筋肉隆々の体をしています。
それは、彼らの腸の中に
「窒素固定菌」という腸内細菌がおり、
サツマイモを食べることで腸内に発生した
窒素をこの菌が食べ、
菌が作り出すアミノ酸が筋肉となっているからです。
しかし、
日本人がいくらサツマイモを食べても
筋肉に変えることはできません。
そのかわり、95%の日本人の腸内には、
海藻を分解できる腸内細菌が存在します
(中国を含む世界各国では15%ほどしか存在しません)。
それゆえ日本人は海藻を食べることで
酪酸菌が増え、
酪酸が筋肉の萎縮を進める
HDAC(エイチダック)という酵素を抑えて
くれるので筋肉を保持できるのです。
つまり、
自分たちが持つ腸内細菌叢に合った
食生活を送ることが大切なのです。
実は酪酸菌を増やすのは「日本食」だけではありません。
「地中海食」も酪酸菌を増やします。
ここで、
地中海食の特徴を示す
「地中海ピラミッド」の内容を見てみましょう。
地中海食らしい食事も「究極の善玉菌」である
酪酸菌を増やすことがわかっています。
食事の際には、
ぜひ「日本食」と「地中海食」を取り入れてみてください。
“腸活のためにグラノーラを毎朝食べるのは、
みんなにとっていい習慣でしょ?”
食物繊維がたっぷりの大麦が入ったグラノーラを、
発酵食品であるヨーグルトやハチミツと一緒に毎朝食べる……。
とてもいい習慣に思えますよね?
もちろん腸に不調のない多くの人にとっては
いいことなのですが、
腸によかれと思って摂るこのような食事が
一部の人にとっては腸の健康を保つどころか、
かえって損なわせている可能性があるのです。
もし、大麦やヨーグルト、ハチミツなどを食べると、
快便どころか逆におなかが張る、
頻繁にオナラが出る、便秘や下痢になるといった
症状が出ているとしたら、
その食材が合っていない可能性があります。
このような状態になると、
小腸で細菌が作り出すガスがお腹にたまって、
腸に炎症や腸もれを引き起こし、
下痢やお腹の張り、便秘、疲労感、
頭がボーッとする(ブレインフォグ)と
いった症状が出てきます。
お腹の不調の代表的な病気で
「過敏性腸症候群(IBS)」といって、
腸内細菌や自律神経の乱れなどが原因で
腸の働きに異常が生じ、
下痢や便秘などを引き起こす患者さんのうち、
およそ3分の2もの人が
SIBOを併発しているというデータもあります。
本来、
腸内細菌のほとんどは大腸に生息していて、
小腸には大腸に比べるとわずかな
腸内細菌しか棲んでいません。
それが、SIBOの人では腸活にいいはずの
食材をエサにして、
小腸内で異常に細菌が増え、
お腹の不調を招いてしまうのです。
こういう方には、小腸で吸収されにくく、
不調を招きやすい4つの糖
「FODMAP(フォドマップ)」を
一旦やめてみることをオススメします。
FODMAPとは、
発酵性(Fermentable)のある、
オリゴ糖(Oligosaccharides)、
二糖類(Disaccharides)、
単糖類(Monosaccharides)、
そして(And)、
ポリオール類(Polyols)
という糖質たちのことで、
それぞれの頭文字を組み合わせたもの。
これらの糖を含む食材には、
次のようなものがあります。
(O)オリゴ糖:
大豆・ヒヨコ豆・豆乳・ゴボウ・カシューナッツ・
小麦・大麦・タマネギ・ニンニク・柿・モモなど
(D)二糖類(乳糖):
牛乳・ヨーグルト・クリームチーズ・アイスクリームなど
(M)単糖類(果糖):
リンゴ・スイカ・ナシ・アスパラガス・ハチミツなど
(P)ポリオール類:
トウモロコシ・リンゴ・ナシ・サクランボ・プラム・
モモ・カリフラワー・サヤエンドウ・マッシュルーム・
シイタケ・サツマイモ・スイカなど
誤解してはいけないのが、
SIBOや過敏性腸症候群の患者さん全員にとって、
これら4つの糖全てが食べられない
というわけではないということ。
「オリゴ糖を食べると下痢をするけれど、
乳糖を食べても大丈夫」という人もいます。
自分の合わない糖質を見つけ出し、
それを避けるだけです。
心当たりのある方は、
下記のステップを試してみてください。
① 3週間、4つの糖を多く含む食品を一切摂らない。
② その後、1つの種類の糖質だけを1週間ずつ試してみる。
③ 食べた後、何を食べたらどんな症状が出たかを記録して、
どの糖が合わないのかを見つける。
食べられる糖質は食べ、合わない糖質は避ける。
少々面倒に感じるかもしれませんが、
一度試してみれば、自分のお腹に合った食材がわかり、
快適に過ごせるようになるはずです。
この食事法(低FODMAP食)は、
オーストラリアのモナッシュ大学で開発され、
IBSに対する食事療法としては
最も改善度が高いことがわかりました。
米国では大規模臨床試験も行われています。
高FODMAPの食材の中でも合わない人が
多いのが小麦類です。
まずはパンやパスタを控え、
お米に替えることから始めてみてもいいかもしれません。
以上が、よくある「腸活」の落とし穴と、
新情報についてでした。
自分の腸によく耳を傾けながら
(私は傾聴【けいちょう】をもじって「傾腸【けいちょう】」を
推奨しています)、
ぜひ自分の腸に本当に合ったオーダーメイドの
腸活に取り組んでみてくださいね。
“自分の寿命は自分で決められる。
”今やそんな夢のような話が、
現実のものになりつつあります。
寿命を左右するのはズバリ「腸」。
この本は、全身の老化を招く「老いる腸」から、
元気で長生きできる「長生き腸」へと、
あなたを導きます。
カギとなるのは、
長生きのための5つの「ご長寿菌」。
本書では、それぞれのご長寿菌の働きや、
それらを育てるための食事法を
メカニズムとともに解説します。
さらに、
がんや認知症など年齢を重ねるほどに
かかりやすい病気や症状についても、
腸という観点から解説。
1喧嘩はするな、
2意地悪はするな、
3過去をくよくよするな、
4先を見通して暮らせよ、
5困っている人を助けよ、
あなたなら出来ます応援しています
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