プラスチックの取り扱いに注意が必要であることは、
過去の研究で何度も証明されている。
そして、
これはプラスチックの原料となる
化学物質にも言えること。
もちろん、
日常生活の中でプラスチックを完全に
避けるのは不可能に近いけれど、
新たな研究により、
この物質が心臓に深刻な被害をもたらす
可能性が見えてきた。
そのため今後は、
もう少しプラスチックとの接触を
減らしたほうがいいかもしれない。
生物医学誌『eBioMedicine』に
掲載された研究結果によると、
フタル酸エステル類の一種である
フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、
略称DEHPは、心臓や血管の病気で
人が亡くなる一因となっている。
フタル酸エステル類は、
内分泌かく乱作用や不妊など、
さまざまな健康上の問題に関連している物質。
ここからは、
今回の研究結果の解説と併せて
医師が勧める対策を見ていこう。
今日の専門家:ジェイミー・アラン博士/
米ミシガン州立大学の薬理学・毒物学助教授。ユ=ミン・ニ医師/
米オレンジコースト医療センター付属メモリアルケア心臓血管研究所の心臓専門医および脂質学者。
チェン=ハン・チェン医師/米メモリアルケア・サドルバック医療センターの
心臓専門医および構造的心疾患プログラムのメディカルディレクター。
ヤンティン・ワン医師/米ラトガース大学ロバート・ウッド・ジョンソン医科大学の助教授および心臓専門医。
この研究で明らかになったこと
その結果、
2018年には全世界で推定35万6238人が
DEHPへの曝露が原因で死亡していることが発覚。
この数字は、
心血管疾患による55~64歳の死亡者の
約13.5%に相当する。
また、このうちの34万9113名の死は
プラスチックの使用に起因している。
プラスチック産業が急成長している
世界の一部の地域では、
他の地域よりDEHP曝露による死亡者数が多かった。
「この研究結果は、
早急にグローバルおよびローカルな規制を敷いて、
DEHP曝露による死亡率を下げる
必要があることを強調しています」と
研究チームは結論で述べている。
DEHPとは?
米国疾病予防管理センター(CDC)によると、
DEHPはフタル酸エステル類の一種で、
プラスチックの柔軟性を高めるために
添加されることが多い。
DEHPは無色の液体。
私たちが日常的に触れるさまざまな物
(一部の床材、壁紙、靴など)に含まれているけれど、
CDCいわくビニールには特に多く含まれており、
ビニールの最大40%はDEHPであることも。
フタル酸エステル類が
健康に与える影響
しかし、
チェン医師によると、
フタル酸エステル類にさらされたせいで
心血管疾患の発症リスクと死亡リスクが
上昇する可能性は大いにある。
「これまでの研究で、
プラスチックに含まれるフタル酸エステル類は、
血中の炎症悪化や、糖尿病や肥満といった
心代謝性疾患に関連していることが
明らかになっています。
こうした問題は心疾患の罹患率と
死亡率を高める可能性があります」
ただし、
ニ医師は、さらなる研究の必要性を指摘する。
できるだけ避けたい
DEHPを含む家庭用品
今日の世界でプラスチック、
フタル酸エステル類、DEHPに
さらされるのは仕方ないこと。
アラン博士によると、
他の多くの化学物質と同様、
DEHPに関しても「一生涯における
累積の曝露量が重要」なので、
毎日の曝露量をできるだけ減らしたほうがいい。
専門家チームによると、
次の7つのアイテムは可能な限り避けるべき。
- ペットボトル:
- ニ医師は、
- 金属製やセラミック製で再利用可能な
- ボトルの使用を勧めている。
- 一部のシャンプー:
- 「手頃な値段で効果的なフタル酸エステル不使用の
- シャンプーを見つけて、
- 曝露量を減らしましょう」とアラン博士。
- プラスチック製の調理器具:
- ニ医師によれば、プラスチック製のヘラなどを
- 熱い食べ物に入れると、
- フタル酸エステル類が混入しやすい。
- プラスチック製の箸やスプーン:
- ニ医師いわく、こうしたアイテムを口に入れると、
- DEHP曝露のリスクが高くなる。
- テイクアウト用の容器:
- ニ医師によると、テイクアウト用の容器は
- 食品に溶出するプラスチックで作られていることが多い。
- プラスチック製の食品用タッパー:
- プラスチック製のテイクアウト用容器と同じく、
- プラスチック製のタッパーも食品に
- フタル酸エステル類を混入させることがある。
- アラン博士いわく、加熱した場合は特に危険。
- 一部のパーソナルケア商品:
- アラン博士によると、フタル酸エステル類は
- 幅広いパーソナルケア商品に含まれている。
- 石鹸やヘアスプレーなどは
- フタル酸エステル不使用のものを選んで
- (パッケージに書かれていることが多い)。
もちろん、
DEHPは至る所に存在するので
完全に避けるのは難しい。
そのため、
「無理のない範囲内で曝露を
減らしていきましょう」とアラン博士。
その一方で、
プラスチック製品の購入を減らすことも大切。
「既存のエビデンスを見る限り、
環境のためにも生物の健康のためにも、
プラスチックの生産量を制限し、
適切な廃棄を行っていくことが重要です」と
ワン医師は呼びかける。
<参考:>