大切な伴侶や家族を失った後は、
寂しさや不安がつきまとうもの。
そんなときには、
心を楽にするマインド・リセットが有効だという。
精神科医の和田秀樹氏
高田純次のような
“テキトー”が理想!?
寂しさを振り払うには、
マインド・リセットも有効です。
要は考えかたや感じかた、
思い込みをガラッと変えてしまうのです。
これまでの人生で染みついたこだわりや
執着を切り捨て、
うんと楽に生きることを意識してください。
「寂しいけど、我慢しなくちゃ」
「なぜ、私ばかりひとりに」という
気持ちを背負い込んでしまうと、
マイナスの感情で心がいっぱいになります。
この考えかたをやめてしまうと自然と
気持ちに余裕が生まれます。
そうすると次第に心が「楽になる」のです。
楽になると、
ひとりぼっちが気にならなくなります。
気にならなくなると孤独感が消えていくのです。
ひとりで寂しいとばかり思わないことです。
やっと自由になれた。
やっと自分のためだけに生きられる。
そう心を切り替えることが大切です。
心のブレーキを外し、ぜひ、
マインド・リセットのスイッチを押してください。
夫や妻を亡くし、
寂しくて仕方がないと思っている人は、
真面目な性格なのです。そういう人にとって、
考えかたを変えてしまうことは、
抵抗を感じるかもしれません。
しかし、
楽に生きることは決して
手を抜くことではないと理解してください。
私は、メンタルヘルスにいい生きかたの
見本を問われたときに「高田純次さんのように、
テキトーに生きられるといいですね」
とお答えします。
テキトーは、
簡単そうで実は難しいことです。
お笑いのプロに聞いても
「ハードルが高い」といわれました。
確かに広く芸能界を見渡しても、
高田純次さんと同じようにテキトーで
売っている人はいませんよね。
その点からもテキトーの難しさはよく分かります。
勝ち負けが基準の
考え方をやめること
私は、若い頃から医療の現場で
たくさんの方々と出会ってきました。
そこで分かったことは、
楽しく充実した暮らしを送り、
毎日に幸せを感じている人は、
考えかたが違うということです。
では、いったい何が違うのか。
私が学び、気づかされて、
たどり着いた答えを特別にお教えします。
名づけて、「マインド・リセット7か条」です。
これからは、
以下の考えかたを意識して生活してみてください。
心が軽く自由になっていくのが分かると思います。
第1条 勝ち負けで考えない
まずは第1条、
勝ち負けで考えないことです。
勝ち負けでものごとを考えていたら、
人間は学ぶことができません。
加えて、視野が狭いままで人生を
歩まざるを得なくなります。
勝ち負けに「ばかり」こだわって偏狭な
考えに陥ることは避けましょう。
人は、受け入れることによって知恵がつきます。
それを負けだと思ってはいけないのです。
自分の考えを変えない以上は、
それ以前より賢くなることはないのです。
世の中には絶対的な正解などない。
試してみないことには分からない。
そうとらえることで世界は大きく広がるのです。
第2条 試してみないと答えは出ない
寂しくて仕方がない。
元気がなくて外出などできない。
ひとりでなんて生きられない。
などといって新しいことに
挑戦しないのはもったいないことです。
自分の基準を勝手につくって、
そこから一切出ようとしないのでは、
何も始まりません。
やる前から「ダメ」「できない」と
答えを出すのはすぐにやめてください。
世間体を気にした思考が
ダメな理由
第3条 「かくあるべし」思考は捨てる
たとえば、素敵な赤い服があったとしましょう。
あまりにチャーミングなので自分も着てみたいと
思ったものの
「これを着たら笑われるんじゃないか」と
躊躇する人は多いのではないでしょうか。
でも、笑われるかどうかは、
着てみないと分からないのです。
まずは、着てみればいいのです。
ひょっとすると「よく似合っている」
「若々しくていいね」と褒められる
可能性もあるのです。
試してみないと分からないではないですか。
「かくあるべし」という思い込み――これは、
あるいはプライドというのかもしれません、
可能性をどんどん削いでしまいます。
「かくあるべし」思考は、
世間体を気にしすぎていることが
原因で発生するのではないでしょうか。
「かくあるべし」=
「かっこ悪いからやめよう」という思考は、
行動範囲を狭めてしまいます。
「ひとりになってしまったのだから、
暗くひっそり生きていくんだ」
「新しい相手なんて考えたら非常識だと思われる」
そんな理由で、
外出をせず、
他者との会話を避けていては、
楽しい後半戦を手にする可能性すらなくなってしまいます。
柔軟に受け止めることこそが、
うつのリスクを下げる鍵となります。
今を楽しむために必要な
「やめること」と「信じること」
第4条 今を楽しむ
今は元気だとしても、
突然、脳梗塞(こうそく)になって、
明日から要介護になったりすることもあります。
転んで骨を折ったら、若い頃と違って治りが悪く、
ずっと歩行が困難なままということもあります。
高齢者は「5年後には」と思っていても、
その5年後には、
体の状況がかんばしくない可能性があるということを、
念頭に置いておかなければなりません。
ですから、今を楽しむのです。
今楽しめることは今楽しんでおかないと、
あとで楽しめなくなることがある。
そういう覚悟が必要です。
若い頃であれば「今は我慢して頑張れば、
あとからいいことがある」と思う人のほうが、
将来成功することも多いでしょう。
でも、私たちは、もうそうじゃないのです。
今楽しんでおかないと損、
そのようにマインド・リセットしましょう。
第5条 人と比べない
自分はあの人と比べて不幸だ。
負けている。あるいは、幸せだから勝っている。
などと、
人と比較して一喜一憂するのはやめましょう。
高齢者の違いとは、「早いか遅いか」それだけです。
第6条 自分で答えを出す
私たちは豊かな人生経験を積んできました。
もちろん、
多くの失敗も重ねてきました。
その積み重ねがいわゆる
「肌感覚」を磨いてきたのです。
自分では自覚しにくいかもしれませんが、
これまでの経験で、
肌感覚が研ぎ澄まされてきたわけです。
その優れた肌感覚にのっとって
出した答えは正しいと信じていいのです。
たとえば、
あなたに新しい恋人ができたとしましょう。
本人同士は結婚したいけれど
「財産目当てだろう」と子供たちや友人が反対する。
でも、恋人がどのような人なのか、
本当に愛し合っているのか、
それとも実は財産目当てなのか。そ
これは、
マインド・リセット全般において、
もっとも大事なこととなります。
勝ち負けでものごとを考えたり
「かくあるべし思考」にがんじがらめになったりするのも、
いってみれば人目を気にしすぎているからです。
自分のことは自分で決めるためにも、
人目を気にしすぎることはやめましょう。
もちろん、犯罪行為はいけませんし、
人に迷惑をかけることは慎みましょう。
でも、そうでないなら、
自分がやりたいことをやればいいと思います。
自己満足は悪いものであるかのように
思われがちですが、
それは間違いです。
人間にとって満足することほど
幸せな状態はありません。
満足すると、
脳内には幸せホルモンである
セロトニンが分泌され、
健康を保つ手助けになります。
たとえば、ひとりになったのですから、
これからは新しい恋をしてもいいのです。
恋人ができたなら、
仲よく手をつないで歩けばいいと思います。
「年甲斐もなく」といった人目など無視すればいいのです。
かつて歌人の川田順が
「墓場に近き老いらくの 恋は怖るる何ものもなし」と
詠んだように、
高齢者の恋は怖いもの知らずでいいのです。
私はそう思います。
恋人はできないけれども、
性欲を持て余しているという方は、
堂々と風俗に行けばいいでしょう。
「エロ爺」とみなす人目など、
まったく気にする必要はありません。
それで男性ホルモンが活性化すれば、
心身ともに元気が出るものです。
心が変われば行動が変わる。
行動が変われば習慣が変わる。
習慣が変われば人格が変わる。
人格が変われば運命が変わる。
私は、
これからの日本にマインド・リセットを
広めたいと強く願っています。
マインド・リセットをすることで、
行動が変わり、習慣が変わり、
最後には運命まで変わっていくのです。
すぐにチャレンジできる簡単なことです。
きたるべき高齢化社会において、
マインド・リセットは必要なことなのです。
<参考: >