作家の橘玲氏が、
ふつうに生きていたら転落する
ゲーマーは、
攻略できないゲーム(無理ゲー)は
「ハック」か「チート」するしかないと考える。
既存のルールを無視して「裏道(近道)」を行くのだ。
同様に人生が攻略不可能だと感じたら、
ゲーム世代がシステムをハックしようとするのは
不思議でもなんでもない。
このことを、
ベルカーブ(正規分布)とロングテール
(ベキ分布)で説明してみよう。

ベルカーブの世界では、
平均から1標準偏差離れた範囲
(偏差値では40~60)に全体の
約7割(68・3%)が収まる。
これを「中間層」とするならば、
その外側にいる「中流の上」
(偏差値60~70)と「中流の下」
(偏差値30~40)はそれぞれ1割強(13・55%)で、
広い意味での中流は全体の95・4%になる。
まさに昭和の「1億総中流社会」だ(上図)。
このような「みんながふつうの世の中」では、
一所懸命勉強してそこそこの大学に入り、
そこそこの会社に就職して、
こつこつ働いて定年まで勤めあげれば
「ふつうの生活」が手に入った。
だとしたらルールから外れ、
「ふつうの奴ら」とちがうことをする
理由はどこにもない。
第2次世界大戦後の
日本が1億総中流社会になったのは、
広島・長崎に原爆を落とされ、
国土が焼け野原になり、兵士・民間人含め
300万人が生命を落とした敗戦と、
アメリカ軍(GHQ)による占領=民主改革によって、
戦前の身分制的な社会制度が
破壊された「恩恵」だった。
これは日本だけでなく、
歴史上、社会が平等になるのは戦争、
革命、(統治の)崩壊、疫病によって
それまでの社会構造が解体され、
権力者や富裕層が富を失ったときだけだ。
「ふつうの奴ら」の
上を行くしかない
ところが平和な時代が続くと、
その日暮らしの者と、
わずかずつでも富を蓄積・運用する者との
あいだに差が生じ、
それが積み重なることで経済格差が大きくなっていく。
このようにしてなんら不正がなくても、
ベルカーブは自然に崩れてロングテールになっていく。

上図を恐竜(ブロントサウルス)に見立てるなら、
長く伸びた尾(テール)の端にとてつもない
富をもつ者
(イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、ビル・ゲイツ、
ウォーレン・バフェット)がいる一方で、
ほとんどの者はショートヘッド
(恐竜の頭部)に集まっている。
近年では、
ロングテールは「上級国民」、
ショートヘッドは「下級国民」と呼ばれるようになった。
ベルカーブの世界とは異なって、
ロングテールの世界では、
「ふつう」に生きていてはショートヘッドの
「下級国民」になるだけだ。
そこから抜け出すには、
「ふつう」ではないことをして、
ロングテール(上級国民)を目指すしかない。
このような社会・経済環境の変化によって、
「ふつうの奴らの上を行く」ハックが
注目されるようになったのだろう。