地球環境は今・・・温暖化と生命の進化
近年、珊瑚礁を取り巻く生態系は目まぐるしい変貌を遂げようとしている。
海面に美しく映えた珊瑚の印象はもはやなく、珊瑚の体内では 白化現象が起こっている。
国際自然保護連盟(IUCN)などが実施した調査によると、 世界の珊瑚のうち3分の1が絶滅の危機に瀬している。
一説によると、珊瑚の白化をめぐっては人為的に起因するストレスに よるところが大きいという。
驚くべきことに、これは近代の地球において特異的な事態ではない。
実は古代の地球でも同様の様模を呈(てい)していたのである。
米国のスタンフォード大学の海洋生物学者ステフェン・パランビ教授は 美しい珊瑚礁を堪能できるビーチで知られる南太平洋のサモアの オフ・オロセガ島にて現地調査を実施。
その結果、最も気温が上昇した日において、珊瑚にストレスがかかり、 その細胞内で遺伝子が活性化するという有意な変化が見られたという。
研究内容の詳細は、2017年11月1日、 科学誌「Science Advance」の電子版に掲載された。
パランビ教授は2016年、世界最大の珊瑚礁地帯として知られる オーストラリア北東部のクイーンズランド沖のグレートバリアリーフへ 足を運んだ。
その時、彼は白くなった珊瑚の惨状を目の当たりにし衝撃を受けたという。
しかも、部分的にではなく、何百キロにもわたり白化現象が進行していたのです。
パランビ教授いわく、こうした珊瑚の白化現象を促す一因として地球温暖化が 絡んでいるいう。
気象変動が地球レベルで進行し、海洋温度が上昇した結果、 白化が顕著になった。
そして、白化現象が進行した珊瑚が最終的にたどり着くのが死という 悲惨な終末です。
スタンフォード大学の研究者らは珊瑚を撮影した写真を観察しながら、 白化がいつどのタイミングで起こるのかを検証。
通常、ストレスがかかる状況下では、細胞の機能は正常に作用しない。
なお、細胞にはストレスによるダメージを回避するための小胞体ストレス応答(UPR) と呼ばれるシステムが備わっており、細胞内の状態を正常に保つ役割がある。
細胞内の状態が悪化した場合には、最終的に細胞の死を招き得る。
「珊瑚に脈打つ様子もなければ、心臓の鼓動も聞こえてこない。 我々は珊瑚が環境にどう反応するのかを理解するためにも、 人間でいう脈や心臓の鼓動のようなバイタルサインを探る必要がある」。
そんな決意を胸に、17日間にわたるサモアのオフ・オロセガ島での 現地調査を開始した。
現地では、毎日正午以降、珊瑚の細胞を収集した。 現地での調査を開始してから7,8日目は干潮であり、 最高気温を記録したが。
両日、珊瑚の細胞内では小胞体ストレス反応が起こり始めた。 翌日の9日目、潮が満ちると、細胞が正常な状態に戻った。
小胞体ストレス反応は珊瑚に特異な現象ではない。 哺乳類や真菌類にもみられる。
もちろん、人間の細胞内でも起こり得る現象であり、 人間がガンなどの病気と闘っている時に、同様のストレス反応が 体内で起こっている。
何らかのストレスに晒されている間、折り畳み構造のタンパク質と そのような構造を有しないタンパク質が細胞内の小胞体に蓄積する。
ここで、小胞体ストレスとは過剰量に達した折り畳み構造の タンパク質への反応を示す。
サモアのオフ・オロセガ島の海水温は人間の体温とほぼ同じ。 その海水に晒されるだけで珊瑚の死滅リスクが一気に高まることは 誰しも推測できるだろう。
ところが、サモアのオフ・オロセガ島の珊瑚はそのようなストレス環境下にも かかわらず元気に生き延びているのです。
ストレス環境下で珊瑚がすくすくと育つ理由について、 研究者はこう分析する。
珊瑚が高温に晒されることで、かえって強くなるのだと。 あたかもアスリートが厳しい条件に耐えて、たくましくなっていくように。
つまり、地球規模で気候変動が進む一方で、 地球に暮らす我々生物は環境に順応しているからなのです。
さて、環境系専門誌「Nature Geoscience」(2013年2月3日付)の 電子版に興味深い研究結果が報告されている。
今日のように地球温暖化、海洋酸性化が進行していた5600万年前、 当時生息していた海洋プランクトンの異なる種がそれぞれ多様なストレス反応を 示していたのであり、それはいわゆる進化の起源であると・・・・。
同様に、今日の生命体の細胞内で起きているストレス反応は進化の 一途であると捉えることもできます。
そして、我々人間を含む生命体は新たな進化の歴史を 辿ることになるのです。
<参考:BEAUTY&ECOONE>
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