2023/12/26

日本の「脳梗塞患者」は100万人… なんと、脳血管の治療を導くのは 「免疫研究」だったという驚愕の事実

 
 
 
 
 

日本の「脳梗塞患者」は100万人…

なんと、脳血管の治療を導くのは

「免疫研究」だったという驚愕の事実

 

ウイルスや細菌などの病原体が

どのように感染を起こして、

からだはどのようにして、

それらの病原体に対抗しているのか。

 

病原体から体を護る「免疫」の気になる

働きとしくみをご紹介していきます。

 

今回は、一見、直接の関係がなさそうな、

免疫系と脳血管系という、

2つの生体システムの関係について取り上げます。

 

 

 

 

 

2007年に私の研究室に一人の若い脳神経内科医、

七田崇さん

(現・東京医科歯科大学教授)が訪ねてきました。

 

彼は脳梗塞を専門にしていましたが、

有効な治療法がほとんどない現状を強く憂い、

何とか脳梗塞の病態を理解し、

新しい治療法を開発したいと、

私の研究室の門を叩いたのでした。

 

脳梗塞は日本では100万人程度の患者が

いるといわれており、

特に寝たきりの原因になることが多く、

認知症と並んでその解決は高齢化社会の

喫緊の課題です。

 

脳梗塞は、

血管が詰まって酸素や栄養が行き届かず

脳組織が死ぬ病気で、

脳の単純な損傷、つまり傷害です。

 

それに免疫が関係するとは、

当時誰も考えていませんでした。

 

 

ところが、

七田さんが私たちの研究室にある

サイトカインの遺伝子破壊マウスに

脳梗塞を実験的に起こさせたところ、

ある種のサイトカインがないと脳梗塞が

ひどくならないことがわかりました。

 

それがインターロイキン-1β(IL-1β)、

インターロイキン-23(IL-23)と

インターロイキン-17(IL-17)でした。

 

 

神経細胞死を誘導する

IL-17を抑える

 
 

炎症には3つのタイプのT細胞が関与します。

 

その中でTh17細胞というT細胞が関与する炎症が、

脳梗塞を悪化させていることが世界で

初めて示されたのです。

 

つまり脳梗塞で脳の組織が死ぬと、

ミクログリアでは処理が追い付かず、

脳の外から大量のマクロファージが浸潤してきて、

それが死んだ細胞や炎症物質に触れて活性化し、

炎症を起こします。

 

そのときに病原体センサーであるトル様受容体

(TLR)が使われます。

 

さらに獲得免疫系のT細胞も呼び寄せられて

IL-23やIL-17を中心としたTh17型の炎症を起こすのです。

 

この炎症性サイトカイン、

特にIL-17が神経細胞死を誘導すると考えられます。

 

 

【図】脳梗塞後の脳内における免疫応答
 
脳梗塞後の脳内における免疫応答
 

七田さんは、

抗IL-17抗体を投与することで脳梗塞が

改善することを発見したのです。

 

ただし残念ながら、

IL-17が関与する脳組織の損傷は発症後

3日目以内で起きることなので、

早期の抗体投与でないと効果がないこともわかりました。

 

 

次々に脳梗塞を改善する

仕組みを発見

 
 

さらに、

その後に何が起きるかを調べました。

 

最初に脳に入ってきたマクロファージは

炎症性のM1型でしたが、

1週間もすると、

修復性のM2型に変化するのです。

 

マクロファージが脳内で性質を変えることは

想像しておらず、

これは驚きでした。M2型のマクロファージは、

脳内の死んだ細胞や炎症性の物質を除去し、

さらに神経の再生を促すのです。

 

 

次に脳の死んだ細胞から出る炎症性の

物質の受容体を探しました。

 

そしてそれがMSRと呼ばれる掃除専門の

受容体であることを見つけました。

 

MSRはアルツハイマー病でも、

可溶性のアミロイドβの凝集体の除去に働く

受容体であることが知られています

(図「脳梗塞慢性期における梗塞部位へのT細胞の集積」)。

 

 

 

【図】脳梗塞慢性期における梗塞部位へのT細胞の集積
 
脳梗塞慢性期における梗塞部位への
T細胞の集積
 
 
 

MSRの発現を上昇させる転写因子

MAF‐Bも見つけました。

 

幸い、ビタミンAの誘導体で白血病の

治療に使われるAm80という薬が、

MAF‐Bに作用することが知られていました。

 

さっそくAm80を脳梗塞モデルマウスに投与すると、

MSRの発現が上がって脳梗塞の症状が改善しました。

 

 

もっと低い濃度で効く薬を見つけないと

ヒトには応用できませんが、

この薬は死んだ細胞の除去を促すもので、

これまでの脳梗塞の治療薬とはまったく違う作用です。

 

面白いことに、Am80はM2型ミクログリアを

増やすことから、アルツハイマー病の治療でも

期待できることが報告されています。

 

 

 

脳内では自然免疫だけでなく

獲得免疫も発動

 
 

このような自然免疫応答で脳内の免疫応答は

終わりかと思っていましたが、

私の研究室の大学院生だった伊藤美菜子さん

(現・九州大学准教授)は何を思ったのか、

脳梗塞発症後2週間以上経過した慢性期の

脳の状態を調べてみました。

 

すると、

これまでとはまったく違った免疫応答が

起きていることを発見しました。

 

 

脳梗塞後2週間を過ぎると、

なんと脳内にT細胞が大量に集まってきて

いることを見つけたのです。

 

慢性期には、

梗塞部位はアストロサイトが取り囲んで

グリア瘢痕と呼ばれる隔離された状態になりますが、

T細胞はそこを超えて脳内にも広がっていました。

 

 

伊藤さんは,

T細胞の中でも制御性T細胞(Treg細胞)が

非常に多いことに気がつきました。

 

脳内では極めて特殊な

獲得免疫系が発動していたのです。

 

そしてTreg細胞をなくすと神経症状が

悪化することを見つけました。

 

つまり、

Treg細胞は抗炎症物質や成長因子などを産生して、

脳梗塞による神経症状の改善に

重要な役割を果たしているのです。

 

 

 

 
 
 

特に興味深いことに、

神経伝達物質で「幸せホルモン」として

有名なセロトニンにTreg細胞を増やす

働きがあることがわかりました。

 

脳梗塞後のうつ病の治療にセロトニンを

増やす薬が投与されることがありますが、

動物実験ではその薬は脳内のTreg細胞の数を増やし、

脳梗塞による神経まひ症状を改善しました。

 

 

もしかしたら、

セロトニンの抗うつ作用にTreg細胞が

関係するのかもしれません。

 

もちろん脳内にはキラーT細胞やB細胞も

浸潤してきていました。

 

それらの細胞の役割の解明はこれからです。

 

このように脳梗塞という脳組織の損傷という

外科的な現象にも、

それが悪化したり収束したりする過程で

自然免疫と獲得免疫が重要な役割を

演じていることが明らかになってきました。

 

しかも、

脳という非常に特殊な環境のせいかもしれませんが、

脳梗塞やアルツハイマー病など脳内で起きる

病気で使われる免疫細胞や免疫分子には

ほかの臓器とは異なる特殊性があることもわかります。

 

 

脳の免疫にはまだまだ知られざる大きな

可能性が秘められています。

 

 

【イラスト】脳の免疫にはまだまだ知られざる大きな可能性が秘められている
 
脳の免疫にはまだまだ知られざる大きな
可能性が秘められている 
 

 

 

<参考:吉村 昭彦

 

 

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